映画「最強のふたり」あらすじと感想【ネタバレあり】障がい者との向き合い方
首から下がまったく動かせない大富豪と、スラム街出身の介添人との友情を描く、実話を元にしたハートフル・コメディです。
演技派フランソワ・クリュゼが首以外動かせない難役を演じます。
そして今やハリウッドでも活躍するオマール・シーが陽気な介添人を演じてセザール賞主演男優賞を獲得。
フランス本国および日本で公開されたフランス映画の中で、歴代トップの観客動員数を打ち出す大ヒットになりました。
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あらすじ
事故により頭部以外が麻痺で動かせなくなった大富豪・フィリップの豪邸に、彼の介添人を志望する者たちが面接を受けに来た。
スラム街に住むドリスもその一人だが、彼だけは事情が違った。
面接を受ける者たちの志望動機はそれぞれだが、一様に障がい者に対して同情と気遣いを持っていることを前面に出してくる。
フィリップはどの志望者にも興味が湧かなかった。
ずいぶん長く廊下で待たされていたドリスは、順番を押しのけて面接室に入った。
そして1枚の紙を、フィリップの代わりに面接官をしている秘書のマガリーに差し出し「サインをしてくれ」と頼んでくる。
その用紙は職業安定所に提出するもので “就職活動に前向きである” という証明になるものだった。
面接を受けた場所3つからサインをもらえば失業手当がもらえる。
ドリスの目的はそれだった。彼は就職する気などサラサラなかったのだ。
この粗野な態度に興味を持ったフィリップは、ドリスにいろいろ質問をしてみた。
音楽の趣味や生活環境まで、まったく自分と真逆である。
自分に対して同情心を持っておらず、皮肉まで言ってのけるところが気に入った。
フィリップは、サインは書いておくから翌朝また来るように、と伝える。
数多い弟妹たちがひしめき合う狭いアパートに、ドリスは半年ぶりに帰ってきた。
賑やかだが相変わらず手がかかり、風呂もゆっくり入れない。
夜遅く、弟妹たちが眠ったあと、仕事を終えた母親の帰りをドリスは待っていた。
フィリップの家から盗んできた卵型の置物をお土産に渡すが、母の態度はそっけない。
それどころか母は怒っていた。
半年間も家を不在にし、ろくに働きもしない。
ついに母は泣きながら、ドリスに荷物をまとめて出ていくように叫んだ。
言う通りにしたドリスは一晩さまよい歩き、朝になって約束通りフィリップの家に行く。
用紙だけ受け取りに来たはずなのだが、1ヵ月だけ試用期間としてやってみないか、とフィリップに誘われた。
気乗りしないが、「まあ2週間も持たないだろうが」とフィリップに煽られて、逆にやってやろうという気になる。
仕事の説明をされても途中で寝落ちしたり、大雑把で雑な介助ばかりしているが、細かいことを気にしないドリスの性格は、フィリップだけではなく周りの使用人や秘書たちも笑顔にさせた。
ある夜、常に持っているインカムからフィリップの苦しそうな呼吸が聞こえてくる。
ドリスはすぐにフィリップの寝室に向かい、汗をかいて口もきけないほど苦悶するフィリップを落ち着いて介護する。
新鮮な空気が必要と考えたドリスは、フィリップを車いすに乗せて、深夜の街を一緒に徘徊する。
感想
フィリップのところで働きたい面接受験者の人たちは、一生懸命に介護の経歴を述べたり “障がい者に対して優しい自分” をアピールします。
面接なのでそれが当たり前だと思いますが、当事者であるフィリップにしてみれば、面白くないんですね。
同情する気持ちは見下している気持ちでもありますから、フィリップは彼らに厳しい目を向けます。
しかしドリスは、フィリップに同情の気持ちなどサラサラなく容赦がありません。
言いたいことを言うし、訊きにくいこともズバズバ訊きます。
この遠慮のなさが、フィリップを障がい者ではなく、ひとりの対等な人間として見ている証明で、それが心地いいんですね。
本来ですと、フィリップは障がい者以前に自分の雇用主なわけだから、普通は失礼な態度を取りにくいものなのですが、ドリスはそんなことは気にしません。
そのため最初は“無神経な人”と、マガリーやもうひとりの秘書イヴォンヌらにも思われるのですが、悪意がなく陽気で面倒見もいいドリスは、結局ほかのみんなとも、なんでも話せる友人になっていきます。
遠慮ばかりして人と距離を取るより、多少失礼でも相手の懐に飛び込むくらい他者との垣根がないほうが好かれるし友達も多いんですよね。
ドリスのように、根底に温かみがあることが前提ですが。
障がい者との向き合い方に同情はいらない、と教えられる作品です。
その人が自力でできないことを助けはしても、対等な人間として扱う。
難しく思えますがドリスは軽々とやってのけます。
気に入らないことを言われれば、チョコレートをくれ、と言われても「健常者用だ」と突っぱねるイジワルもするし、車いすのまま後ろで固定されて移動できるバンを見て「あんたを馬あつかいできるか」と言って、カバーがかかっていたマセラティの助手席に乗せてドライブに連れ出すこともします。
まったく上下関係がなく、友達として普通の接し方をしているんですね。
皮肉を言い合うこともあれば、体を心配したり、友達として恋愛も応援します。
そういう関係を築いている過程が、観ていてとても心地よくて楽しい。
ストーリーも良ければ、俳優たちの演技も素晴らしくて魅力的です。
この作品が多くの人に愛されているのが良く分かります。
それから原題は「intouchables (不可解民たち) 」といって、おそらく「社会ののけ者たち」という意味なのですが、これを「最強のふたり」という邦題にしたセンスがすごくいいと思いました。
翻訳者の方なのか配給会社の方がつけたのか分かりませんが、この作品をよく理解していて前向きなタイトル。
全部が素晴らしい作品に日本版の公式がまたさらに魅力を付け加えてくれたな、という感じです。
他フランソワ・クリュゼ出演作品
他オマール・シー出演作品
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