映画「イニシエーション・ラブ」あらすじと感想【ネタバレあり】いい子は実はめちゃ怖い
2015年公開。
映像化不可能と言われた叙述トリック型のミステリー小説の映画化作品です。
原作を読んでいた私も「無理でしょ。大丈夫?」と始めは思いましたが、さすがは堤幸彦監督です。
うまくやったな、と感心しました。
ヒロインを前田敦子さんが演じ、松田翔太さんと森田甘露さんが彼女を取り巻きます。
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あらすじ
【side A】
静岡在住の冴えない大学生鈴木は、ある日コンパに誘われる。
そこで出会った歯科衛生士・成岡繭子に一目惚れし、繭子からも好意を持たれる。
コンパのときのグループで何度か遊びに行きつつ、二人で飲みにも行ったりした。
お互いを「たっくん」「まゆちゃん」と呼び合い、正式に付き合い始める。
鈴木は繭子のために頑張っていい男になることを目指し、見た目を変え、車の免許も取得した。
クリスマス・イブをシティホテルで過ごしたがる繭子のため、もう11月の半ばで予約がとれないことを覚悟して電話を問い合わせると、今ちょうどキャンセルが出たばかりということで、ふたりは喜んで予約を入れた。
イブ当日。
ホテル内のレストランでプレゼントを交換する。
そのとき、繭子がいつも左手薬指にしていたルビーの指輪がないことに気づく。
無くした、と答えた繭子に鈴木は「次の誕生日に贈るよ」と約束して繭子を喜ばせた。
そして繭子から贈られたエア・ジョーダンのバッシュを履いて、ホテル前の広場を陽気に動き回ってふたりで笑いあった。
【side B】
静岡の企業に就職した鈴木だったが、すぐに東京本社に出向させられた。
繭子には毎週末戻ってくる、と約束する。
しかし東京の水に馴染めず、仕事も忙しい。
そして高速代がバカにならなくなってきて国道を使うようにしたら、ただでさえ疲労している体を休めることもできず、精神的にも疲弊してきた。
そんな頃、鈴木は同期入社の石丸美弥子と、残業後にふたりで飲みに行ったり、一緒にランチをとったりと親しくなる。
週末に繭子との約束があったが、美弥子の誘いを優先して断った。
繭子と会ったのはその次の週末。
そのとき鈴木は、繭子から妊娠している可能性を示唆されて動揺する。
結婚しようと言うが、子供が出来たから仕方なしに結婚するなんてイヤだ、と繭子は泣いた。
妊娠三か月だった。
考え抜いた末、鈴木は「堕ろそう」と繭子に告げる。
堕胎手術後の繭子を抱きしめながら、同じ罪を背負ったことへの罪悪感と連帯感を感じていた。
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感想
鈴木のことを好きだと告白した美弥子。
鈴木もまた彼女に惹かれているのですが、中絶させた繭子と別れて美弥子と付き合うことに躊躇します。
鈴木にとって繭子との付き合いは、すでに “義務感” になっていたのです。
そのことを見抜いた美弥子は、彼女との恋愛は子供から大人になるまでの通過儀礼だったのではないか、と指摘します。
初恋だったということから、子供から大人になるための通過点として繭子がいた、というのです。
だから「始まり・ (加入のための) 儀式」という意味を持つ initiation を使い、イニシエーション・ラブだと言いました。
昔からよく「初恋はうまくいかない」と言われています。
初めてづくしのために、失敗が多いためかもしれません。
だけど実際、初恋の人と結婚して穏やかに過ごしている人たちも大勢いるわけで、通過儀礼というのは詭弁でしかないと感じます。
もともと美弥子は、オトナな元カレにこう言われて捨てられたのですが、今度は自分がそのセリフを利用しました。
すでに繭子との恋愛に疲れてきていた鈴木にとって、この言葉は腑に落ちたのでしょう。
知らず知らずのうちに鈴木は繭子と別れたいという気持ちが強くなっており、「この初恋は通過儀礼だったのだ」と自分を納得させれば、罪悪感は多少薄れると考えたのかもしれません。
別れを切り出すことは、泣かれたり怒られたり、罪悪感がどうしても湧くものです。
それに押しつぶされるよりは、「通過儀礼だった」と自分に言い聞かせて前を向いたほうがいいのかもしれないですね。
「私の願いは、いつもびっくりしていたい、ということです」
国木田独歩の言葉だったと思いますが、初めて目にしたときは「?」と思いました。
しかし、いろんなことが当たり前に思えて、刺激が少ない人生になっている大人の今、この言葉の深さが分かります。
そして身近なところでミステリーの「どんでん返し」でびっくりしたい、と思って検索をかけました。
すると必ずこの原作小説がランキングされているのです。
“殺人” などの物騒な言葉が並ぶなかで、いかにも恋愛小説風のタイトルは異質で記憶に残ります。
なので古本屋で見つけたとき、すぐ購入しました。
そして本当に仰天しました。
Side AでもBでも、鈴木の視点からの繭子ことマユは「いい子」です。
でも読み終わったときの感想は「マユ、怖いー!」でした。
映画でも、最後の前田敦子さんの笑顔は可愛いけど怖いです。
映画でも小説でも、このどんでん返しを味わってみてください。
女の怖さが最後に分かります。
80年代オールディーズが全編で流れ、小道具や衣装など当時の世相がよく再現されています。
当時大ヒットしたドラマ「男女7人夏物語」、そして続編の「男女7人秋物語」が、キーワードとして使われています。
そこでそのどちらにも出演していた片岡鶴太郎さんと、続編のほうで出ていた手塚理美さんが夫婦役で出演していて、ニヤリとさせられました。
こちらもよろしくお願いします
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