映画「序の舞」あらすじと感想【ネタバレあり】絵筆だけでのし上がれない哀しい時代
女流画家・上村松園の生涯をモチーフにした宮尾登美子さん原作を、中島貞夫監督で映画化しました。
主演は名取裕子さんと、その母を演じる岡田茉莉子さん。
名取さんと関わる男性たちを、佐藤慶さん、風間杜夫さん、三田村邦彦さんが演じます。
出番は少ないですが、高峰三枝子さんや三田佳子さんも鮮烈な印象を残していきました。
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あらすじ
安政5年。
9歳の少女・勢以は、京都で葉茶屋を営む島村家の養女になった。
商いの総てを教わり、明治2年に養父母が相次いで亡くなった。
翌年、婿養子を迎えるが、夫は二児を残して5年後に逝去。
26歳で未亡人になった勢以に実母は、長女の志満を里子に出してはどうかと打診する。
ずっと肉親と離れて寂しい思いをしていたことを恨んでいた勢以はその申し出を突っぱね、ひとりで葉茶屋を切り盛りして娘たちを育てると決意した。
あまり構ってもらえないと感じていた幼い志満は、まだ赤ん坊の妹・津也に嫉妬して目を潰そうとする。
気づいた勢以に止められた勢いで熱湯に手を突っ込んでしまい、火傷の痕がずっと残ることになってしまった。
小学生になった津也は絵が得意で、全国規模の展覧会で一等賞を獲った。
美術教師の西方太鳳から画壇の大物・高木松渓の画塾を紹介してもらい、卒業後はそこに通い出す。
島村松翠の雅号を授かり、16歳の頃にはイギリス人の買い手がついたことで60円も稼いで母と姉を驚かせた。
天才少女と言われて新聞にも載り、近所からもチヤホヤされる。
ヨーロッパに留学した太鳳に負けまいと、津也も自分の絵を追求していた。
そんなひたむきな彼女に、同じ門下生の村上徳治は恋心を持っていた。
美人画にこだわる津也は髪の線について試行錯誤しており、松渓に相談して活路を見出した。
そして初めて見る松渓の “千枚描き” に目を奪われる。
千枚描き終える頃は、高かった陽は完全に落ちて夜になっていた。
一息ついた松渓は津也を食事に誘った。
二人きりの待合茶屋で松渓は津也を手籠めにし、津也は妊娠してしまう。
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感想
松渓が気持ち悪かった。
佐藤慶さんのエロ親父演技がとにかく気持ち悪かった!
千枚描きのときはカッコいいんですよ。
わき目もふらず一心不乱に筆を動かすその姿。
最初は手元を見ていた津也も、次第にその真剣な横顔から目が離せなくなってきます。キュン♡
(ああ、実際の松園もこうして鈴木松年に惹かれたんだなぁ) なんて思っていた途端の鬼畜展開ですよ。
通せんぼ、とかガキか!
しかも逆らったらもう画壇で生きていけないと分かっていながらの所業。
実力ある女性たちが、本当にその実力だけでのし上がるのが難しい時代の哀しさです。
実際の松園の絵を見ても、絵筆一本だけで賞を獲ることは十分可能だと思うのですが、展覧会そのものに出せなければ賞も取れないし買ってくれる人もいないわけで…
抜きんでた才能を潰そうとする力はいつでもどこでもあるのですよね。
「出る杭は打たれる」って昔からある言葉だし。
絵のために逆らえなかった津也でしたが、松渓の子を宿したことで絵を描くことを勢以に反対されてしまいます。
どうしても「描きたい」という情熱は、仲の良かった母娘の断絶に繋がりました。
せっかく描いた絵を台無しにされ、焼き捨てられる絶望感…
そして生んだ娘は否応なく里子に出されて、津也は勢以を恨みました。
実の親子が離れるべきではない、と言って津也たちを育てた勢以なのに、私生児だからといって津也と子どもを離れさせる。
状況に合わせて信念を曲げてしまった勢以から津也は逃げ出してしまいます。
志満は嫁に行っており勢以は寂しい生活になります。
そして津也も、舞台美術の仕事についている村上を頼りますが、彼女自身は絵の仕事につけず買い手もつかず苦しい生活に。
ヨーロッパから帰った太鳳と幸せになれそうな雰囲気が出たところで…
また松渓が現れた
これまた気持ち悪い現れ方で、悪寒が走りました (;´Д`)
料亭の主人を買収していて騙し討ちで登場して、女房が死んで寂しい~、と言いながらにじり寄ってきて…
なぜに受け入れる、津也!?
おおぅ、もう気持ち悪さマックスで耐えられん…
そしてまた妊娠。
なぜにこう一撃必中なのか… こういうところも気持ち悪い。
なのに「本当にワシの子なのか?」と認知拒否する卑怯者。
もうダメ。
千枚描きのときのカッコよさなんて全部吹っ飛んだ。
才能に惚れて付き合ったり結婚したりする場合あるけど、ちゃんと人柄を見ないと長続きしないって本当ですね。
どんなにその人の持っている才能・能力を凄いと感じても、人格はまた別物と考えるようにしようと思います。
松渓のせいで太鳳からも破門されて厳しい人生行路になった津也でしたが、後悔した勢以と和解して落ち着きました。
私生児を育てていることで世間からは厳しい目を向けられますが、家の中が温かければ外の悪天候なんて大したことない、と勢以は笑います。
やはり一度腹をくくると女性は強いです。
津也が描いた大作「母子」に圧倒され、ヨボヨボと立ち去る松渓の情けなさが際立ちます。
紆余曲折あった家族の絆は最強なのかもしれないな、と感じました。
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