映画「オンディーヌ 海辺の恋人」あらすじと感想【ネタバレあり】
2010年公開のアイルランド映画です。
ニール・ジョーダン監督・脚本の、少しファンタジックなヒューマンドラマ。
主演はコリン・ファレル。
この作品でオンディーヌを演じたポーランドの女優アリシア・バックレーダとの間に子供がいますが、結婚には至りませんでした。
ジョーダン作品の常連スティーブン・レイも神父役で出演しています。
あらすじ
アイルランドの小さな田舎町で暮らす漁師のシラキュースが、いつも通り船で網を引き揚げると、その中に女性が引っかかっていた。
驚いたシラキュースは慌てて網を外し、生死を確認しようと近づくと、女性は自力で息を吹き返す。
病院に連れていく、とシラキュースは言うが、女性は頑なに拒否。
人に会いたくないのだという。
そこでシラキュースは、亡くなった母が一人暮らしをしていた、町の中心から離れた家に女性を住まわせた。
シラキュースは彼女をそこまで送ったあと、元妻マウラのところに行き、腎臓病を患っている娘アニーを移動透析車が来ている場所に連れて行く。
透析を受けている間シラキュースはアニーに、今しがたあった出来事を物語風に話した。
ケアセンターからアニーに電動車椅子が届き、それに乗って帰宅させるとマウラの彼氏アレックスがシラキュースを “サーカス” と言ってバカにした。
「道化者」を意味するシラキュースのあだ名だった。
翌朝仕事に行く前に、川で洗濯をしている昨日の彼女に声をかける。
一緒に漁船に乗りたがる彼女を乗せ沖合に出る。
名前を聞くと、彼女は “オンディーヌ” と名乗った。
明らかに偽名だがシラキュースは気にしなかった。
オンディーヌが船で歌い出すと、ロブスターが大量に網に掛かっていた。
こんなことは初めてだった。
シラキュースはオンディーヌを幸運の女神と褒め称える。
組合に売るため一緒に町に行こうと誘うが、人目をどうしても避けたいオンディーヌは断った。
ロブスターを換金したお金でシラキュースはオンディーヌに服や食料などの差し入れを購入して持っていく。
電動車椅子で遠くまでひとりで移動できるようになったアニーは、現在オンディーヌが住んでいる祖母の家まで行き、シラキュースとオンディーヌが一緒にいるところを見て、透析中に父が話したのは本当に物語だったのかと疑問に思った。
翌日アニーはオンディーヌの元に行き、彼女を伝承上の妖精・セルキーと信じ込む。
二人は友だちになった。
ある日またオンディーヌを漁船に乗せて漁にでると、刺し網でなければ獲れないサケがトロール網で大量に掛かって驚く。
しかし運悪く監視船の監視員から調査が入り、人目を避けて隠れていたオンディーヌが見つかってしまった。
港に着くと町中の注目を浴びた。
マウラやアレックスからも、シラキュースはイヤミを言われる。
そしてオンディーヌを探し回っていた謎の男も、行方を突き止めて彼女に接触してきた。
シラキュースがアニーを学校まで迎えに行くが、マウラはアレックスと一緒にプールバーでしこたま飲んでビリヤードに興じていた。
シラキュースはマウラに家の鍵をよこすように言うが、マウラはこの場にアニーを残すように言ってきた。
心配で自分と一緒にオンディーヌのところに連れて行こうとするが、アニーから大丈夫だから、と言われて仕方なくアニーをマウラ達に預けて帰宅する。
その夜、アニーを後部座席に乗せてマウラは酔ったまま車を運転。
十字路に差し掛かったところで横から来た車と追突した。
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感想
水揚げされて病院に連れて行く、とシラキュースに言われたオンディーヌですが、人と関わりたくない、と言って頑として聞き入れません。
それを聞いたシラキュースは「じゃあ俺は?」と問います。
するとオンディーヌからは「あなたは別よ」と言われ、思いがけずニンマリ顔になりました。
んまぁ、単純。
その後にも、似たようなやりとりがあってニマニマするシラキュースですが、実はシラキュースは自分でも他人から嫌われている自覚がある人。
以前アルコール依存症で周りに迷惑をかけまくり、そのため “サーカス” という屈辱的なあだ名をつけられてしまったのです。
だからオンディーヌからの「あなたは他の人とは別よ」と言ってもらうのは、半信半疑になりながらも素直に嬉しくて、つい複数回聞いて確認したくなってしまうのですね。
他人と関わりたがらない人から自分だけは特別に受け入れられた。
普段他の人間から爪弾きにされている側のシラキュースからすると、これだけでオンディーヌの世話を焼きたくなるのも道理です。
人間、特別扱いは嬉しいものです。
よく詐欺臭いメールなんかの謳い文句に「あなた様だけの特別なご招待!」とかありますが、これなんかは特別感を演出しているものの典型になりますね。
でもこれは全然嬉しくない。
そうそう騙される人もいないと思いますが。
マウラが事故を起こし、アニーの身を案じて事故現場に駆け付けたシラキュースは、そのまま病院にもついていきます。
アニーはショック状態でしたが、シートベルトをしていたため無事でした。
シラキュースは医師に呼び止められ、助手席に乗っていたアレックスが死亡したことを聞かされます。
加えて彼がドナーカードを持っており、アニーの腎臓と適合することが分かりました。
アレックスの葬儀。
しばらく歩けなくなったマウラは、車いすに乗りながら遺灰を海に撒きます。
雨模様だったため傍らで傘を差しかけてくれているシラキュースに、歩けるようになるまでの間アニーを預かるよう頼みます。
シラキュースが、ずっとアニーと暮らしたがっていることを知っているマウラは「望みが叶ったわね」と皮肉もこぼしました。
そしてオンディーヌと別れるように言うのです。
彼氏を失い、体も不自由になって寄る辺がないことに心細くなったのでしょうか。
このときのマウラは、シラキュースを頼ろうとしている感がありありです。
あわよくば復縁を望んでいるような、でも愛情があるようには見えない…
ただ自分を助けてくれる存在がほしいだけに感じました。
そしてそのためにはオンディーヌがジャマだから別れるように言う。
ときどき、もう別れて他人になった相手を、まだ自分と繋がりがあると思い頼ろうとする人がいます。
この二人にはアニーがいるので確かに繋がっていますけど…
しかし別れて、自分が不幸だからといって相手に寄りかかろうとするのは間違っている気がしました。
ましてや相手に現在のパートナーと別れろというのは、いくらなんでも介入しすぎ。
別れた人はもう自分とは関係のない人です。
誰と付き合おうとその人の勝手です。
一度特別な関係になったから、と甘えたり余計な世話を焼くくらいなら、キッパリと断ち切ったほうがいいと思っています。
シラキュースは人生に “不思議なことかステキなことが起こるよう” 待っている人間です。
神父はそんな彼に「不幸になるのは簡単だが、幸せになるには努力がいる」と諭します。
「不思議なこと」は運かもしれませんが「ステキなこと」は自分の努力次第で起こすことができます。
待つだけではなく行動していくことが大切ですね。
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