ライチ ラライチ ララライチ♪ 古屋兎丸「ライチ☆光クラブ」あらすじと感想【ネタバレあり】
「帝一の國」「アマネ♰ギムナジウム」などの代表作がある鬼才漫画家・古屋兎丸先生。
その原点ともいえるのが「ライチ☆光クラブ」です。
古屋先生が高校生のときに観た劇団・東京グランギニョルの舞台劇に感銘を受け、漫画家になってからもずっと描きたかった情熱をぶつけた熱い作品。
どのページも隅々まで古屋先生の気迫を感じ、本当にこの舞台を愛してやまなかったことが分かります。
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あらすじ
林立する工場の黒い煙に囲まれた地域・蛍光町。
この地区に住む9人の男子中学生は毎日放課後、自分たちの秘密基地に集まっていた。
ゼラと呼ばれる少年が帝王として君臨し、他8名はゼラの命令のもとロボットを作っている。
この基地の秘密を覗いた者たちは、彼らによる拷問で命を落としていった。
ゼラを中心に狂気が渦巻いている空間である。
ついにロボットは完成し、ライチと名付けられる。
ライチはゼラの命令通り美しい少女・カノンを捕獲。
ゼラはカノンを玉座に据え、世話係の雷蔵以外のメンバーは彼女に触れることや邪な対象で見ることを禁じた。
一方でカノン以外にも捕獲された少女たちを逃がしもせず餓死させようとするゼラに、元々の光クラブのリーダーだったタミヤは正義感を取り戻し反旗を翻す。
個性が打ち出されたキャラクターたち
秘密基地に集まる少年たちはゼラによってドイツ語の番号が付けられ、名前もフルネームで呼ばれることはありません。
それぞれの呼び名は以下のとおり。
1番 (アインツ) ニコ
2番 (ツヴァイ) 雷蔵
3番 (ドライ) カネダ
4番 (フィーア) デンタク
5番 (フュンフ) ダフ
6番 (ゼックス) タミヤ
7番 (ジーベン) ヤコブ
8番 (アハト) ジャイボ
絵が上手い古屋先生は、人物の書き分けも上手いです。
ひと言で “美少年” といっても、いろんなタイプがいて、ゼラのように冷徹とか雷蔵のように女性っぽいとか、タミヤのように精悍とかジャイボは妖艶、のように顔かたちから雰囲気まで特徴が打ち出されています。
こういう群像劇で書き分けが出来る作家さんは、読んでいる側からも「誰が何をしている」という状況を、混乱することなく理解させられるから助かります。
その上でそれぞれの思惑も分かりやすく、人間ドラマに深みがあるから全1巻の短さながらすごく濃くて読み応えがあるんですよね。
ゼラを敬愛し忠誠を誓うニコ。
科学者としての野望を成就させたいデンタク。
人としての倫理観を取り戻したタミヤ。
ジャイボの愛欲。ゼラの変態。ダフの… このへんは違うな。
そうした彼らの裏切りと疑心暗鬼は光クラブを内部から瓦解させていきます。
さらにライチとカノンの恋愛感情の伴った心の交流がメンバーたちの思惑と絡み合って、光クラブの崩壊を凄まじい描写とスピード感で乗り切り、圧巻のクライマックスへと繋げていくのです。
美麗画なのでついじっくりと眺めてしまうのですが、作品全体はとても疾走感があります。
破滅までまっしぐら。
この破滅の美学を形にしたような作品の登場人物たちで、ほとんどが人形のように整った顔立ちの彼ら彼女らですが、表情が豊かなので人間味があります。
ゼラに至っては疑心暗鬼が酷くなりすぎてメンタル壊れて顔芸が愉快すぎる状態になりました。
唯一表情がないライチでも、雰囲気で感情が伝わるすごい画力。
タミヤ&カノンと一緒に外に出ようとしても棒が折れてしまって置いて行かれそうになったときの寂しそうな佇まい。キュン♡
カノンが飛び降りて自分の元に来てくれて嬉しいことも、表情変わってないのになぜか伝わるんですよね。
このときのカノンの意を決した表情、めちゃくちゃ綺麗です。
カノン大好きになる瞬間 (*´Д`)ハアハア
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モブだけど注目したい
そんな魅力的なキャラクターが詰まった「ライチ☆光クラブ」の中、女教師のこともフィーチャーしたいです。
作中では「女教師」としか呼ばれなかった女性ですが、舞台で演じた女優さんの苗字から萩尾先生と言うらしいです本当は。
冒頭で男子生徒・浜里の次に彼らに捕まって殺される薄幸の女性・萩尾先生。
捕まって、ずっと青ざめて怖い思いをしながらも教師としての自分を曲げない口調で彼らを説得しようとします。
全裸に剥かれた上に悪罵の集中砲火を浴びて、かなりの屈辱を味わらせられてもプライドを保って決して彼らに屈服しなかった立派な女性だと思うんですよね。
彼女の最期の言葉には、ありったけの軽蔑がこもっていて、彼女なりの最後の抵抗を見せてて強い女性だと感心します。
だけど誰からも顧みられず (ノД`)・゜・。
タミヤまで「あの女教師のときは (殺されるのを) 何も感じなかったのに」とか言っちゃってるしさ。
ざけんなテメエ ( ′Д`)┌┛)`д) ;∴げしっ
萩尾先生~あなたは素晴らしい人だよ~。私は好きだよ~。
読み進めるうちに存在を忘れるけど。
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パロディ容認の太っ腹
この「ライチ☆光クラブ」は、アマチュアの人たちによる二次創作やパロディがたくさんあり、ニコニコ動画などに投稿されています。
これに関して古屋先生は、作品の宣伝をしてくれているから、と容認しているんですね。
神……(゚Д゚)
著作権うんぬんとかで二次を嫌がる先生方も多い中、度量が大きい。
先生がおっしゃってるとおり、実は私もパロディ作品を見て「ライチ」を知ったクチです。
最初は及川光博さんの「三日月姫」という曲のMVを見たことでした。
眼鏡に白衣。手にはムチを持っている姿が「ゼラ!」と言われていて「ゼラってなんだ?」と思って調べる。
→何か分かったところでパロがいっぱいあるから片っ端から見ていく。どれも面白い。
→「絶対読む!」と決める。
という流れでした。
パロを見ていたおかげで米津玄師さんがハチ時代に作った「ドーナツホール」という曲も知ることが出来て、「ライチ」のおかげで見聞も広がった感じです。
そして古屋先生自身もパロディ描いてるんですよね。
「蛍光小の常川君」「常川君の日常」は4コマギャグでゼラをイジッています。
そういやこの先生、ギャグセンスもあるんだった。
「ライチ」の前作「π (パイ)」でも声出して笑ったな。
この4コマギャグではゼラの母親と弟が登場します。
弟からは変態呼ばわりされ、母親からはゲンコツを喰らい…
報われないゼラが笑かしすぎですが、母親の外見が (はっきり顔を出してないけど) 美少年を産んだ人とはちょっと信じがたい肝っ玉母さん風で意外でした。
どのパロディも面白いので、ご興味おありでしたら是非。
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まとめ
最初は舞台。そして漫画。
そしてその漫画をベースにまた舞台。さらに映画。
ユニークな形で広がっていったこの作品。
ちょっと他に類を見ない復活の仕方ですが、最初の舞台のみで消えることなく残っていけて良かったです。
実際とても面白い作品ですから。
ただしグロありで過激なので、耐性のない方はお気をつけください。
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古屋先生こちらで俳優やってます
こちらもよろしくお願いします