映画「ウエスト・サイド物語」 (1961年版) あらすじと感想【ネタバレあり】
シェイクスピアの四大悲劇のひとつ「ロミオとジュリエット」を、50年代の移民系ストリート・ギャングたちのストーリーに置き換えたブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品です。
主演はナタリー・ウッドとリチャード・ベイマー。
敵役のジョージ・チャキリスとその恋人役のリタ・モレノが揃ってアカデミー助演男優&女優賞を獲得しています。
劇中で歌われる数々のナンバーもヒットを記録し、サウンドトラックも売れました。
マイケル・ジャクソンの「Beat It」は、曲もMVも間違いなくこの作品からインスパイアされたものだと分かります。
天才が名作を観ると、そこからさらにまた名作を生み出す良い連鎖が出来るものなんですね~(・∀・)
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あらすじ
ヨーロッパ系移民で構成されているストリート・ギャング「ジェット団」が牛耳っているニューヨーク・スラム街に、プエルトリコ系移民の「シャーク団」が現れるようになった。
この二つのグループによる縄張り争いは日に日に激化していき、顔を合わせるたびに一触即発の争いが起こる。
自分たちの縄張りを守るため、ジェット団の現リーダーのリフは、先代リーダーのトニーに助力を頼んだ。
今はプールバーの店員として真面目に働いているトニーは断るが、食い下がるリフの勢いに負け、今夜のダンスパーティーへの参加をしぶしぶ了承する。
一方シャーク団のリーダー・ベルナルドには、洋裁店で働いているマリアという妹がいる。
この店にはベルナルドの彼女アニタも働いており、ふたりはいろいろ相談し合う友人だった。
アメリカに来て一か月。
シャーク団に属するみんなは故郷に帰りたいと思い、アメリカに馴染めずにいるが、彼らを取り巻く女性たちはすでにアメリカの環境に適応していた。
今夜初めて参加するダンスパーティーでの出会いをマリアは楽しみにするが、兄のベルナルドはシャーク団の一員であるチノをマリアの婚約者にしようとしている。
それがマリアには気に入らない。
チノはまったく好みではないし、彼氏くらい自分で見つけたかった。
パーティー会場では当然ジェット団とシャーク団が顔を合わせ、互いの彼女たちも反目し合う。
司会者が大きなケンカにならないように気を配るが、楽しむより険悪な雰囲気が充満していた。
この諍いから一歩引いているトニーとマリアは、会場の端と端で目が合い、互いに一目惚れをした。
互いに近づいていき、自然にダンスを開始する。
いい雰囲気になるのだが、ふたりの接近に気づいたベルナルドは、慌ててふたりを引き離した。
そのときふたりは、互いが敵対しているグループの身内だと知り愕然とする。
しかし一度火が点いた恋愛を止めることはできなかった。
帰宅させられたマリアを探し、その名を呼ぶトニーに応えてアパートのベランダに現れるマリア。
ふたりは柵越しに永遠の愛を誓いあう。
彼女が働く洋裁店にもやってきて、マネキンを使って結婚式の青写真を思い描く。
まさに幸せの絶頂にいた。
一方、ジェット団とシャーク団は対立にケリをつける最終決戦の調整をつけることにした。
トニーが働くバーに互いのグループが集まり、日時と場所、そして対決方法を決める。
洋装店にいたふたりにもその情報が入り、兄の身を案じるマリアはトニーに抗争を止めるように頼み込んだ。
トニーもまた親友であるリフを心配してバーに駆けつける。
しかし争いを止めるように説得できる状況ではなかった。
トニーは、せめて死人が出ないようにとステゴロで対決するように言い渡す。
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感想
ひと月前にプエルトリコからアメリカにやってきたシャーク団のみんな。
すでにニューヨークに馴染んでいるように見えますが、男性陣は実は不満を持っていました。
縄張りを持っていないことが不安なのかもしれないですが、故郷に帰りたいものだ、とグチをこぼします。
しかしアニタはじめ、彼らと付き合っている女の子たちはすっかりアメリカに適応し、いつまでも故郷にこだわっているベルナルドたちに、もっとここを好きになるように説得します。
移民問題。
世界中のどこでもある問題ですよね。
さまざまな事情により祖国から他国へ移住する人々。
そしてさまざまな考えがそこにはあります。
下記はあくまでも私個人の思うところなのですが…
移住先の慣習を受け入れようとする人もいれば、祖国への愛国心に執着して移住先の国に馴染もうとしなかったり、むしろ移住先に自分たちの要求を押し通す勢力がいるために厄介なことになっています。
移民の人への同情の気持ちは、基本みんな持っていることでしょう。
ただ、その国の生活保護などの福祉目当てだったり、不法就労で税金をその国に納めなかったり、自分たちを優遇するように声高に主張するようなことをされれば、さすがに移民を止めどなく受け入れることに対して、国も国民も躊躇してしまいます。
「郷に入っては郷に従え」は、英語でもあることわざですし、こうした相互理解を示すことが国際社会では大切な心持ちなのではないかと考えているのですが、それを受け入れられず移民先の国の方針を自分たちに合わせるように要求する人がいることも事実です。
ときどき、自分が被害者であるかのように移住先を糾弾する移民の方を見ますが、ある程度の不自由があるのは自国民でも当たり前。
祖国を出なければならなくなったことに同情はしますが、どの国も自国ファーストだし自国民も大変で、移民の方の要求をすべて受け入れることは出来ない、ということを理解してほしいな、と思います。
抗争によって、リフはベルナルドに殺され、そしてベルナルドはトニーに殺されます。
アニタはトニーを許さず、マリアにもトニーとは縁を切るように言いますが、兄を殺した相手とはいえ初めて深く愛した人と別れることができません。
ふたりで遠くに行く約束をしますが、トニーはチノに撃たれてマリアの目の前で倒れます。
チノから銃を取り上げたマリアは、自分も死のうとしました。
泣き叫び、憎しみ合うことを止めないギャングたちを詰ります。
自分に銃を向けましたが、結局力なく銃を下ろしました。
愛する人が目の前で死んだら…
この経験を持つ方、少なくないと思います。
事件や事故の場合もあるでしょうし、病床で最期を看取った方などもいらっしゃるでしょう。
凄まじい喪失感に襲われ、ひょっとすると希死念慮が出る方もいるかもしれません。
徐々に立ち直って日常生活を送れるようになると思いますが、哀しみはずっと胸の奥にしこりのように残るでしょう。
それでも後追い自殺はしてはダメです。
辛くても生きて、その経験を誰か同じ経験をする方を支える力に変えていってください。
あなたの助けを必要とする人が必ずいます。
57年の初演から何度も再演されているこの作品。
2019年の来日公演が「IHIステージアラウンド東京」で上演されました。
この劇場は、世界にふたつしかない「円形の客席が360度回転するステージ」となっており、映画でベルナルドを演じたジョージ・チャキリスもこのシステムに興味を抱いて来日し、プレ公演を楽しんだそうです。
(ちなみにもうひとつのステージアラウンドはアムステルダムにあります。そちらが世界初です)
長く愛されているミュージカルが、ステージアラウンド・システムでまた新たな魅力を増していき、評判もかなり良かったそうです。
映画のほうも、スピルバーグ監督がリメイク版を作り上げ、今年の年末に公開されますね。
(本当は去年公開のはずだったけどコロナのせいで延期に…)
映画でも舞台でもそれぞれに魅力がある作品です。
時間が長いけれど、そのぶん歌やダンスに見ごたえがあるので、あっという間に感じられるでしょう。
というか、ミュージカルって大半がそうなんですよね(;^ω^)
他ジョージ・チャキリス出演作品
他ナタリー・ウッド出演作品
こちらもよろしくお願いします
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