映画「イヴの総て」あらすじと感想【ネタバレあり】田舎娘の化けの皮
生き馬の目を抜く演劇界の舞台裏の駆け引きと転落を、大女優と新進女優の対立構図で見せる名作です。
監督はジョゼフ・L・マンキウィッツ。
野心的な新進女優をアン・バクスター、裏切られる大女優をベティ・デイビスが演じ、それぞれの代表作になっています。
まだ無名時代のマリリン・モンローが、プロデューサーお気に入りの駆け出し女優の役で出演しています。
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あらすじ
演劇界で名誉ある賞の授賞式で、新人女優のイヴ・ハリントンが史上最年少で主演女優賞を獲得した。
万雷の拍手の中でトロフィーを受け取るイヴを、ベテラン女優マーゴ・チャニングと、劇作家ロイド・リチャーズの妻カレンは冷ややかに見る。
今は6月。
カレンはイヴと出会った前年10月に思いを馳せる。
マーゴ主演の舞台にやってきたカレンは、いつも来ている若い女性がいないことが気になった。
マーゴの楽屋に続く劇場裏口に向かうと、気にしていた女性に声をかけられる。
イヴ・ハリントンと名乗る彼女は、マーゴの舞台を毎日欠かさず観に来てくれている。
控えめで、マーゴを心から敬愛している様子のイヴをカレンは好ましく思い、マーゴの楽屋に招待した。
楽屋ではマーゴとロイド、マーゴの付き人のバーディが賑やかに喋っている。
気後れをしている雰囲気のイヴを、カレンはマーゴに紹介した。
マーゴも舞台上からいつもイヴがいることに気づいており、なぜそんなに熱心なのか聞いてみた。
イヴはおずおずと身の上話をし、戦争で夫を亡くして辛かったときにマーゴの舞台を観て感動したことがきっかけだったと打ち明ける。
楽屋にいた全員が心を打たれ、特にマーゴは涙を流すほど感動した。
マーゴの彼氏で演出家のビル・サンプソンが楽屋にやってくる。
これからハリウッドに向かうため、空港で見送るマーゴを迎えに来たのだ。
マーゴはイヴに、彼を見送った後ふたりで話したいから、と言ってイヴも空港まで同行させる。
そしてその夜からマーゴはイヴを荷物ごと引き取り、客間で寝泊まりさせて付き人として雇った。
イヴは控えめだが、気が利いて頭がいい。
ある日マーゴが着ていた衣装を、こっそり自分の身体にあてて鏡を見ながらひとり芝居をするイヴを見て、マーゴは微笑ましく思った。
しかし気が利きすぎることや、マーゴの一挙手一投足を自分のものにしようとする態度に、まずバーディが疎ましく思い始めた。
ビルの誕生日にイヴが勝手にマーゴの名前で電話をしたのを境に、マーゴもイヴに不信感を持ち始める。
そしてマーゴが主催したビルの誕生日パーティーで、皆がイヴを褒めちぎり、彼女の若さへの嫉妬も手伝って、マーゴは屈辱感に打ちひしがれる。
もうイヴとの関わりを無くしたいマーゴは、売り出し中の駆け出し女優ミス・カズウェルを伴ってパーティーにやってきたプロデューサーのマックス・ファビアンにイヴを引き取るように頼んだ。
一方イヴはカレンに取り入って、マーゴの代役女優が現在妊娠中で舞台に上がれないのなら、後任を自分にしてほしい、と頼み込んだ。
イヴを信用しているカレンは、ロイドを通じて望みを叶えることを約束する。
後日、ミス・カズウェルのオーディションに付き合う約束をしていたマーゴは、2時間遅刻して劇場に到着した。
しかしオーディションはとっくに終わっており、マーゴの役割はイヴが代役としてこなしていた。
この場にいたビル、ロイド、ファビアンらは全員、ミス・カズウェルは“見込みなし”と判断するが、代わりにイヴという光る原石を見つけたことに色めき立つ。
イヴが自分を蹴落とそうとしていることに危機感を持っているマーゴは、彼らのイヴを称賛する言葉の数々に取り乱して、全員との関係を悪化させてしまう。
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感想
一見、従順で素直で控えめなイヴが、自分の与り知らぬうちに有力な演劇関係者たちに取り入っているのを徐々に知っていくマーゴの気持ちたるや、想像しただけでザワザワします。
追われる者の恐怖。
頂点に立ったからこそ味わうものでしょうね。
いかにも田舎っぽさが抜けない素朴で純情そうなイヴに、凄まじい裏の顔があるとは確かに思えません。
すべてが計算で狡猾な裏の顔を出したときの落差!
上手い……
誰かを追い落とそうという意志がある場合、ライバル心をむき出しにするより有効な手段だと思います。
でもその分、裏切られたほうの怒りは相当なものになりますよね。
最初の印象が良かった分、その反動で大嫌いになる気持ちの度合いも大きいものでしょう。
会社勤めでも、今回入社してきた新人ちゃん、気も利くし素直だしいい子だな~、と思っていたのが実は人を利用してのし上がろうとしているのだと気づいてしまったら、「本性そっちかよ」と失望するし軽蔑もしてしまいますものね。
最初からあまり期待していない新人のほうが、後々の評価はフラットなものになるな、とちょっと失礼なことを考えてしまいました。
なのでマーゴやカレンの気持ち、分かります。
女優として成功するために、ビルやロイドにまでコナをかけるイヴのがむしゃらの野心には圧倒され、悪女としての魅力にも感じますが。
結局この色仕掛けは失敗しているから、まあイヴを許す気持ちにもなる(;´∀`)
批評家のドウィットという人物が、後半に話をかき回すジョーカー的役割で光っています。
彼こそが本当にイヴの総てを知る人物です。
そしてイヴの運命は彼の掌の上で転がされる予感をさせます。
ラストはイヴの元に、かつてマーゴの前に現れたときのイヴのような娘フィービーが現れます。
ドウィットはフィービーと接触した途端に、イヴの今後を面白がるように去っていきました。
観客に、イヴが因果応報を受けることを予想できるラスト。
いやもう本当、脚本うますぎ!
演技や演出もいいけど、何より脚本がすごすぎ!
2時間以上の映画ですが、無駄がなくて見入ってしまう作品です。
そして何度も見たくなります。
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