映画「七年目の浮気」あらすじと感想【ネタバレあり】妄想爆発オジサンのてんやわんや
1955年公開。
映画史に残る名シーン、地下鉄の通風孔からの風でマリリン・モンローのスカートがブワァッとめくれ上がるのはこの作品です。
スチール写真やポスターなんかでかなり有名になっていますが、本編の中では案外アッサリしています。
バラエティー番組でよく使われる効果音「ふわぁ~お♡」みたいな声は出していません。
艶笑コメディが得意なビリー・ワイルダー監督の腕が冴えています。
とめどない主人公の妄想に声出して笑いました。
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あらすじ
夏のニューヨークは殺人的な暑さだ。
世の夫たちは、妻子を避暑地に送り出して自分は仕事に励む。
昔ながらのマンハッタン島に住む人の慣習である。
そんなわけで夏の駅構内は避暑に向かう妻子たちと見送る夫たちで混雑していた。
出版社勤務のリチャードもその一人。
妻のヘレンと息子が汽車に乗るのを見送りに来たのだが、自分がいない間きちんと健康的な生活を送るように妻に釘を刺され、うっかり者の息子は舟遊びで使うオールを忘れてリチャードが後で送らないといけなくなった。
妻子を汽車に乗り込ませてホッと息をついた夫たちの目の前を美女が通りかかる。
全員が浮気心をムズムズさせて彼女の後をつけていくのを、リチャードも本能的に同じ行動を取りそうになって慌てて自分を諫めた。
自分は浮気なんかしない良き家庭人なんだ。そう言い聞かせる。
妻の言いつけ通りカロリー抑えめの健康的な夕食を取り、アパート1階の自宅に帰宅する。
誰もいないがらんとした部屋に、羽を伸ばせる開放感とともに寂しさもこみ上げる。
仕事をしようと、これから出版する原稿を読み始めた。
精神科医が執筆した心理分析本の第三章「中年男の抑圧された本能・その原因と結果」。
このタイトルを見た瞬間、目の前の椅子にヘレンの幻想が現れる。
浮気なんかしない。
でも妻が思っているほどモテないわけじゃないぞ。
いろんな女性に言い寄られては袖にする妄想が炸裂する。
ひとしきり妄想内で周囲の女性たちをフッた後、改めて原稿と向き合うが、やはりタイトルを見るだけで今度は、妻は自分を信用していないのでは、と疑心暗鬼になる。
そのとき、アパートの玄関から大きな音がしてそちらに行くと、グラマラスな金髪美女が、持っている扇風機のコードが扉に引っかかって困っていた。
上の階の住人が避暑に出かけている間、間借りさせてもらうのだという彼女の腰つきにクラクラする。
しかし頭を振ってスケベ心を払拭した。
テラスに戻り本の続きを読もうとして… 唐突に植木鉢が落ちてきた。
リチャードは驚いて声を荒げるが、落としたのは先ほどの美女だと分かり、怒りを納める。
そして「どうお詫びをしていいか…」と申し訳なさそうにする彼女に、下に降りてきて一緒に飲まないか、と誘った自分自身に驚いた。
浮気なんかするもんか、という信念と、美女と浮気がしたい、という煩悩の間にリチャードは揺れることになる。
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感想
「女房が思うほど亭主はモテもせず」という言葉が昔ありましたが、すぐに夫の浮気を疑ってしまう奥様たちはこんなふうに窘められました。
リチャードのところはこの反対で、夫がモテるなどヘレンはまったく思っておらず、リチャードはそれが面白くありません。
信用されていることに満足しつつも、少しくらい心配してくれても…という相反する気持ちが彼の中でせめぎ合っています。
でも現実のリチャードはビール腹の冴えない中年。
願望とはうらはらに女性たちが靡いたことなどありません。
それで妄想の中で彼女たちがリチャードにメロメロになっている世界に入り込んで、これまた妄想の中のヘレンに「どうだ、すごいだろう」と胸を張ります。
まあ妄想ですからいいんですけど…
ただ、リアルに存在する人を相手に、自分の都合のいい妄想を具体的に繰り広げると、現実とのギャップを受け入れられずに、区別がつかない危険な境界線を越えることがあります。
もしかしたら始まりは勘違いからだったかもしれません。
なぜか「この人は自分に好意を持っている」と思い、態度がおかしなものになる人がたまにいます。
思い出すとムカムカしますが、全然なんとも思っていない人から何故か好意があると思いこまれ、「告ってないのにフラれた」という経験が数回ほどあります。
なんというのか、聞いてもいないのに「俺、好きな人いるんだよね」とかいきなり言われて「はあ…(心の声:なんだいきなり?どうでもいい)」と気のない返事をすると、「だからポムさんのことは、ちょっと…」とか言われて「はああああっ!!!???」と、仰天するような出来事に見舞われるんです。
びっくりしすぎて反応できずにいるのですが、脳内では「なんで?私アナタを好きなんて一言も言ったことないよね?そんな気持ち欠片もないし、なにゆえそんな勘違いが起こったの?」と疑問だらけ。
しかし相手はなんか憂い顔っぽい表情を作って、こっちの顔も見ずになんか好き勝手なことほざいて(たぶん“オレって罪な男だぜ”的な)いるのですが、正直こちらもまともに聞いている余裕がない。
何しろ脳内は、唐突に落とされた “不可解な謎” という名の爆弾の処理に忙しいのだから。
どの人も、まったく意識していないし、そんな雰囲気にもなったことがない相手だったので、なぜ勘違いされたのかは分かりません。
でも彼らの脳内では私は、彼への恋心に身を焦がす女、という設定にされていたようです。オエー
妄想劇場の出演者にされて、しかも不本意な役回りにされて、ギャラよこせや、って感じです(-“-)
モテモテの妄想は楽しい、と思います。
でもその幸せな妄想を現実と混同して幸せな勘違いをするのは相手にとって迷惑です。
勝手に好きだと思われて勝手にフラれる、とかストレス半端じゃない。
現実はもっと厳しい、という認識はきちんと持っておいてくれ。頼む。
さて、上階にやってきた美女を自分の部屋に招いたリチャード。
来る前から妄想を炸裂させてソワソワしまくりです。
「自分は何をやっているんだぁー」と後悔しながらも、部屋を片付けワインとグラスを用意し、ズッコケて氷を床にぶちまけ、音楽はムードを盛り上げるためラフマニノフがいいな、なんてノリノリで彼女を迎える準備をします。
でも残念ながらラフマニノフは彼女のお好みではありませんでした。
ピアノが置いてあるのを見つけた彼女はリチャードに、何か弾いてみて、と頼みます。
妄想の中では華麗にラフマニノフが弾けますが、実際のリチャードにはその腕前はありません。
美女の期待の眼差しを受けて仕方なく弾いたのは、初心者向けの練習曲「チョップスティックス」。(映画「ビッグ」で、巨大鍵盤で弾いたのと同じ曲)
酔った美女を口説くにはムードに欠ける、明るくトボけた曲調ですが…
彼女は「その曲、知ってる!」と喜んでリチャードの隣に座り、仲良く一緒に連弾します。
こういうのいいですねえ。優しい (∩´∀`)∩♡
デートとなるといろいろシミュレーションして演出を考えますが、うまくいかなかったとき、露骨に不機嫌になったり、つまんなそうな表情をするのは、やっぱり失礼。
失敗を逆に一緒に楽しめるようにフォローできる人になりたいですね。
リチャードの妄想は果てしなく暴走し、ついにはヘレンが浮気をしている、とまで考えます。
やましいことがある人は、他の人もそうに違いないと思いこむ傾向がありますね…
上階の美女との関係もはっきりせず、ヘレンも手放したくないリチャードでしたが、ラストでようやくシンプルな解決法を思いついて頭も心もスッキリします。
気持ちが絡むことって、勝手に複雑に考えてしまいがちですが、実はいたってシンプルなものなんですよね。
余計なことを取っ払って物事の核の部分にだけ目を向けると、ストンと解決することがあります。
思考の袋小路に入ったように感じたときは意識してみようと思います。
それにしても楽しい作品でした。
妄想ネタって、昔からあったんですね。
しかもそのネタを引っ張って1本の映画にしてしまうとか… やるなぁ。
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