【英訳版】サン = テグジュペリ「星の王子さま」あらすじ・感想・考察・英語メモ

アントワーヌ・ド・サン = テグジュペリの代表作「星の王子さま」を、原語フランス語から英訳されたものを読みました。
短いストーリーにもかかわらず、読了までに時間が結構かかりました (;´∀`)
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あらすじ
子供の頃、描いた絵を大人たちに理解されずに絵の道を断念した飛行士は、ある日エンジントラブルによりサハラ砂漠に不時着してしまう。
砂の上で一晩過ごした夜明け。
目の前に小さな金髪の王子さまが現れて「羊を描いて」と頼んできた。
描いてあげた羊はどれもダメ出しを受け、最後に「羊が入っている箱」の絵を描いてあげると喜ばれる。
王子さまは一軒家ほどしかない小さな星からやってきたという。
その星には活火山2つと休火山1つ、そして綺麗なバラの花が一輪咲いていた。
しかし星を破壊しかねないバオバブの木が根付きやすいため、駆除するための羊が必要なのだった。
王子さまはバラを大切にしていたのだが、バラの傲慢な態度に嫌気が差して家出をしてしまう。
そして彼は6つの星を渡り歩き、最後に地球にやってきたのだ。
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感想
正直に言うと、最初は面白く感じられなくて、1章読むごとに眠気に襲われました。
英訳も難しく感じられるし (王子さまのことを指しているのにherとかになっている部分も多々あって混乱。フランス語の女性名詞をそのまま女性を指す目的格にしてしまったのだろうか…?)
ドラマチックな動きがなかなか無いので、どうしたら面白く読めるかをChat GPTに相談しました。
いろんな案が出てきた中で、ふとバオバブや火山が何を象徴しているのか気になって質問したところ、明確な解が示されたことで自分なりの考察・解釈をする面白さが出てきた感じです。
実際、物語に難解さを感じて挫折している人は少なくないのだとか。
分かるわ~。実際Chat GPTなかったら、私も挫折していたと思います。
しかも最初は、修理中の飛行士をしつこく質問攻めにする王子さまのわがままにイラッとして「あの子わがままだよね」と悪口をいう始末。
だけどこの子のわがままは、飛行士の中にある子供の部分を呼び起こしている役割になっていることを教えられたことで、それと同時にずっと「大人なんて」と見下していた大人に彼自身もなっていたことに気づく重要なファクターだと気づき、少しずつでも読み進められました。
以降は私なりの考察を書いていきます。
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火山とバラ
王子さまの星にあるバラは「無償の愛」や「大切な存在」を象徴している、というのはすぐに分かりますが、ふと、火山と一緒にある、という部分に目を向けたとき、バラの意味は他にもあるように感じました。
しかもこの星は、バオバブの脅威もあります。
王子さまの星を「人間の心の世界」と考えると、バオバブは「小さなうちに対処しなければ大変なことになる問題」=「放置しておくと心が壊れてしまいかねないもの」と見られます。
そして3つの火山は、マグマというエネルギーを持っている強い感情、と見受けられ、これもまた放っておくと大きな問題に発展するもの、になります。
そんな火山と同じ場所にあるバラの花。
私はこれを「人間が持つ善性」と捉えました。
真心や理想、信念など、気高く美しいものであるけれど、火山灰を浴びたりマグマに飲まれてしまう危険性もある。
火山が持つ「怒りや憎悪の感情」に飲まれて心の中が悪意に支配されてしまったり、努力を怠って理想や目的に辿りつけなかったり、誘惑に負けて信念を曲げてしまったり…
そんな「美しくも弱い、人の心」の象徴がバラなのではないかと考えました。
誰しもが心の中はこの星のように火山とバラがあるのだと思います。
だからこそ王子さまは毎日火山を掃除して手入れしているんですね。
これは「自分の機嫌は自分で取る」に通じるもので、怒りに飲まれないように、嫌悪や憎悪はなるべく忘れるように、道を踏み外さず正しく生きるように。
そうすることでバラ=「自分の中の良い部分」を守っていける、と解釈しました。
自分の中の悪心と善性を上手く共存させていくことは、人の永遠のテーマかもしれません。
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6人の大人たち
家出した王子さまは、地球にやってくるまでに6つの星を巡りました。
そこでは、それぞれおかしな人たちが一人ずつ住んでいるのですが、そこから王子さまも学んでいきます。
それぞれの特性や象徴についてはChat GPTの回答を引用します。
👑 第1の星:王様
- 特徴:命令したがる。支配欲が強く、自分の権威を絶対視している。
- 象徴するもの:権力、支配、権威への執着。
- 王子の学び:人を従わせることに意味はあるのか?
→「他人をコントロールしたがる大人は、自分が孤独であることに気づいていない」
🌟 第2の星:うぬぼれ男(虚栄心の人)
- 特徴:「ほめてくれ!」としか言わない。
- 象徴するもの:承認欲求、自己愛。
- 王子の学び:「他人がいないと自分を認識できないって、むなしいよね…」
→ 「大人は他人の評価ばかり気にして、自分の本当の価値を見ていない」
🍷 第3の星:呑み助
- 特徴:恥ずかしいから飲む → 飲むことが恥 → また飲む、という無限ループ。
- 象徴するもの:逃避、自己否定、悪循環。
- 王子の学び:「どうしてこの人は自分を苦しめるようなことばかりするの?」
→「大人は問題を見つめるより、忘れるための手段ばかり探してる」
💰 第4の星:ビジネスマン
- 特徴:「星の数を数えて所有した気になっている」
- 象徴するもの:所有欲、数字の支配、実用主義。
- 王子の学び:「でも星を持ってても何もできないじゃない」
→「大人は“持つこと”にこだわって、“感じること”を忘れてる」
🕯️ 第5の星:点灯夫
- 特徴:星が速く回転するせいで、ずっと点けたり消したりしている。
- 象徴するもの:義務感、勤勉さ、忠誠心、でも融通が効かない。
- 王子の学び:「この人は唯一、他人のことを気にかけている。でも疲れてる」
→「人のために働いている人は立派だけど、自分を犠牲にしすぎると本末転倒」
📚 第6の星:地理学者
- 特徴:「記録はするけど、実際には何も調べに行かない」
- 象徴するもの:知識主義、観念優先の非実践性。
- 王子の学び:「本当に大事なのは“永続するもの”かもしれない。でも、それは人が行って、見て、感じないとわからないんだ」
→「知ることと、生きることは違う」
点灯夫以外は、みんな悪い意味で子供っぽい大人として描かれています。
彼らと出会う旅で王子さまは「大人ってなんなんだろう?」と疑問を持つようになるのです。
しかも地球に来れば、たいていの人がこの6人のうちの誰かに当てはまっている。
ここでは、子供の頃に持っていた純粋さや好奇心を持っていることと、精神面が子供のまま年だけ重ねてしまうことの違いを出しているように見えました。
誰にでもこの6人の要素は少なからずあると思うので、ここもまた火山とバラの関係同様、精神面のバランスをとることの大切さを説いていると思います。
そして読んでいるときに思ったのですが、聖書の「七つの大罪」(強欲・傲慢・嫉妬・色欲・暴食・怠惰・憤怒)から1つだけ少ないんですよね。
七つのうちのどれかに彼らは当てはまるかな? と思いましたが、強欲がビジネスマン、傲慢が王様、怠惰が呑み助、くらいでしょうか?
それも「大罪」というほどではない。
でもよくない性質ではあるから「小罪」ってところでしょうかね? (そんな言葉ないわ)
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見えないものの両面性
地球にやってきて出会ったキツネ。
キツネから、少しずつ仲良くなっていくコツを王子さまは教わります。
他者との絆や関係性は、時間をかけて育まれることを知り、そして大切な世話をしてきた自身の星のバラこそが特別である、と気づくのです。
信頼も愛情も、友情も絆も、目に見えません。
有名な名言「大切なものは目に見えない」(what is important is invisible to the eye) はキツネのセリフです。
しかしここまで読んで気づいたのですが、バオバブや火山、6人の大人たちが象徴するような「良くないもの=大切ではないもの」も現実では目に見えないものではないですか?
これをChat GPTに訊いてみると、原文であるフランス語では
“On ne voit bien qu’avec le cœur. L’essentiel est invisible pour les yeux.”
「心で見ないと。肝心なものは目に見えない」
となっていました。
英語ではimportant、日本語でも「大切な」と訳されているため、何か良いものだけが見えにくいのだと勘違いしてしまったんですよね。
「大切な」のニュアンスって、例えば「この気持ちは大切に胸にしまっておく」とか「この品は大切だから気を付けて扱おう」とか、慈しみとか守る気持ちが入っているから、そう思い込んでしまったのかもしれません。
だけどL’essentiel (本質的な) になると話は別です。
本質的なものには良いものだけではなく、悪いものも含まれるからです。
そうするとこの名言の意味合いも変わってきて「大切なものも、大切じゃないものも目に見えない」。
見えないからこそ見逃され、気づかないうちに成長していく危うさがある。
善悪も正負も清濁も、すべて心で見て感じ取り、都度きちんと手入れをしていくことが大事だと作者は伝えたかったのかな、と思いました。
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英語学習メモ
1週目は、内容そのものになかなかハマれず、眠気にもたびたび襲われるため難しく感じて、初見や忘れていた単語をただ調べるだけの作業になっていました。
だけどこのブログを書く前にもう一度サラッと読むと、書いていたメモのおかげもあってだいぶ読みやすくなっていることに驚きました。
気になった英語表現としては、第4章にある
If I try to describe it here, it is so as not to forget it.
「ここに描こうとするのは、忘れないためなんだ」
にあるso as not to「~しないために」と、何かを避ける行動 (目的の否定) を表す熟語と、
Not everyone has had a friend.
「誰でも友達がいるわけじゃない」
のnot every「すべてが~というわけではない」の部分否定の熟語が、続けざまで例文のように組み込まれているのは学習者としては嬉しいところでした。
他の章では、take a fancy「思いを寄せる」などが初見であったり、mass (大きい固まり) に「ミサ」、temple (寺院) に「こめかみ」の意味があることなどが興味深かったです。
あと、browは「眉毛」だけではなく「ひたい」も含むことが出来るんですね。
これも新しい発見でした。
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まとめ
英語学習の気持ちで読み始めた「星の王子さま」ですが、こんなに考察する部分が多いとは思いませんでした。
完全に舐めていた~。
読みながら、上原愛加さんの「プリンセス・レッスン」はこの小説をベースにしているんだな、と思いました。
バオバブの木を抜いたり、火山を掃除しているのなんか、まんまですものね。
ただこちらは「女性向け自己啓発」よりさらに先を見た「人間の命の根幹」も示しています。
砂漠に隠れていた井戸とヘビは、命の源と死の象徴。
生きていること自体に感謝し、人生の喜びと困難を見つけながら、恐れることなく死を迎えること、がこの一冊に凝縮しているように感じました。
最初はつまらない、と思いましたが、読んで良かったです。
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