矢口敦子「愛が理由」あらすじと感想【ネタバレあり】現代ミステリーのはずだけど
こちらも何故か家に置いてあったので読んでみました。
孤独な女性の心理を描写した恋愛サスペンスです。
新品価格 |
あらすじ
翻訳家の広瀬麻子は39歳。独身。
高校時代からの親友・芦辺美佐子とは近所に住み、頻繁に交流している。
つい先日、他のふたりの友人・坂井真由子と馬場冬美と4人で食事をしたとき、美佐子が綺麗になっていることに全員驚いた。
「女はいつだって綺麗になれる」と悠然と笑った美佐子が、その数日後に死亡した。
美佐子の夫・伸彦から連絡を受けて芦辺家に駆けつけた麻子は、和室の布団で横たわる美佐子を見て動揺する。
見たことのないメタリックピンクの携帯電話を胸元に置いた両手の中に持っていた。
足元には、時季外れの火鉢が置いてある。
その中の豆炭で一酸化中毒死をしたのだ。
事故死として処理されたが麻子は納得がいかなかった。
伸彦に殺されたのではないか、と疑いを持ち、葬儀後に一度美佐子の部屋を物色。
目ぼしいものはなかったが、ちょうど伸彦の甥・高畠進矢がやってた。
まだ高校生の少年だが「美佐子」と呼び捨てにしているのを聞いて、ふたりの関係に疑いを持つ。
後日、美佐子と見に行く予定だった歌舞伎を見に行くと、進矢が森本泉という美少年と共に現れた。
そして泉から「心中ゲーム」というものが流行っていると聞かされる。
感想
文章が読みやすいです。
スルスルと入ってくるので、私にしてはハイスピードで読めました。
読むのが早い人なら数時間で読み切れると思います。
でもミステリーとしては弱い。
美佐子は結局自殺だったわけですが、そこに追い込んだのは誰なのか、に焦点が当たります。
麻子はずっと伸彦を疑いますが、甥の進矢も怪しくなってきます。
そして自分の懐にヒョイッと入ってきた泉を無条件で信頼。
彼の嘘がどんどん暴かれていっても、泉を信じたい気持ちが勝ってしまい、言い訳のほうを信じようとします。
こういう心理状態、分かる気はします。
この小説は、美佐子の死の真相だとか、誰がどの役割で美佐子の死に関与したのか、といったミステリー要素より、こういった麻子の心理描写に比重を置いています。
素人探偵の麻子に近づく魔性の美少年・泉。
漫画ならワクワクするけど、小説となるとちょっとリアリティに欠けるかな~、と思いました。
実際、泉の造形が少女漫画チックで、三次元の芸能人とかにイメージしづらいんですよ。
とはいえ、年下のイケメンくんにときめいちゃう年配女性の心理はリアルです。
実際、入院中のおばあちゃんでも、窓から見えるコンビニに毎日入っていく20代男性を指さして「あれ、彼氏♡」とか言って同室の人たちとワイワイ楽しんでたりしますしね。
推しがいるのは人生に張りが出ていいものだ♪
本気の恋愛をする人もいますが、法に触れない年齢ならいいんじゃないですかね。
泉はまだ高校生だからアウトだけど。
ただ、泉を通して麻子の情けなさが際立ち、イラッとしたのも事実です。
高校時代からずっと美佐子に依存してきていて、精神的に自立していない感じがモヤりました。
結局素人探偵では手づまりになってしまい、元カレが本当の探偵として登場。
元刑事で伝手があり、探偵として優秀。
死にかけている麻子と泉を救け、事件の真相も暴いてしまう。
美佐子から結婚を申し込まれたことがあるイケメンで、未だに麻子を愛している。
チートキャラやんけ。
もうファンタジー世界の住人ですよ、こんな男性。
かくして美少年・泉との戯れを終わらせ、このチート男性と結婚するであろう結末。
夢小説ですな~ ( ̄▽ ̄)
前半はわりと惹きこまれて面白かったのですが、作者のシュミが全開になった後半はちょっと「なんだかな…」という感じでした。
こちらもよろしくお願いします
内田康夫「箱庭」あらすじと感想【ネタバレあり】浅見光彦シリーズ61作目…でも初めて読む
宮部みゆき「火車」あらすじと感想【ネタバレあり】借金こわいマジこわい
新品価格 |