「格子なき牢獄」あらすじと感想【ネタバレあり】牢獄に囚われているのは誰?

第二次大戦中、フランスはドイツに占領されたことで日本とも同盟関係になります。
そのためフランス映画は日本にも多く入ってきて、この作品も当時の日本の若者たちの人気になった作品です。
特に中心で描かれる非行少女を演じたコリンヌ・リュシェールが魅力的なのですが、彼女はドイツに協力的だったかどで逮捕され、28歳の若さで獄死しています。
そんな彼女の代表作です。
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あらすじ
厳しい規則で少女たちを管理している女子感化院。
掲示板のガラスが割られたことから院長のアペル夫人は全員を集めて問い詰める。
犯人は名乗り出なかったが、ここに不満がある者は前に出るように言う。
6人の少女たちが前に出てきて、アペル夫人は彼女たちを独房入りにした。
これだから誰も何も言えない。
少女たちはグチをこぼし合うことしか出来なかった。
そんな折、感化院は民営から国が管理する施策に変わり、ここの院長も新しくなる。
アペル夫人は降格となり、国から派遣されてきた院長はイヴォンヌという若い女性である。
彼女はこの感化院の医務室で働く医師マレシャルの婚約者だった。
1年後には彼と一緒にインドに行くため辞職する予定だ。
イヴォンヌは職員たちに対し、一切の暴力を認めないと宣言。
さっそく院生たちを個別に面談して不満や要望を聞くことにしたが、これまでそれを言うたび懲罰を受けてきた彼女たちの口は重い。
彼女たちの経歴は、1度きりの万引きや家族から厄介払いをされただけの者がほとんどだった。
犯罪者として折檻や重労働を課すのは違う、とイヴォンヌは考える。
中庭から騒がしい声が聞こえて窓から顔を覗かせると、ひとりの少女が警察に連行されてきて暴れている。
脱走していたネリーという17歳の院生だ。
イヴォンヌは彼女を院長室に連れてくるように職員に伝える。
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感想
最初こそ反抗的だったネリーですが、わりとすぐにイヴォンヌに懐きます。
まだ17歳なので、本当は素直なのかもしれないですね。
そして年上の男性に恋に落ちるのも早い。
これも素直さゆえか… やっぱり危険な年ごろですね (;´∀`)
この作品、それ以外にもかなりスピーディーで、感化院はあっという間に救護院に早変わり。
大規模改革がほんの数か月で出来ちゃいます。
アペル夫人が激おこぷんぷん丸でもどこ吹く風で、イヴォンヌ改革は順調にいきました。
それでも感化院の空気に染まってしまった少女たちの中には、矯正がうまくいかない子もいます。
隠れてタバコを吸ったり、ウソも平気でつき…
感化院で唯一の男性であるマレシャルは、仕事にのめり込むイヴォンヌとうまくいかなくなり、自分に思いを寄せるネリーに次第に心惹かれるようになりました。
そんなふたりが医務室で寄り添い合うのを見た院生ルネは、ネリーを脅してタバコを調達させ、しまいには薬品棚のアルコールを盗む手伝いをさせます。
結局バレてイヴォンヌに失望されたネリーですが、マレシャルと恋仲になったことは言えません。
ここでのルネの言動がちょっと不思議なのですが…
ネリーを睨むような顔つきなのに、言葉では彼女を庇って、そのついでにふたりの関係を暴露。
ラストを綺麗にまとめるために整合性の取れてない行動をルネにやらせた、みたいな雑な脚本に見えました。
ちょっとこの部分は残念ですが、全体的にはよく出来たストーリーです。
格子なき牢獄に囚われているのは、いずれ出ていく少女たちではなく、ずっとここで彼女たちの更生に尽力していく自分たち職員である、というラストのイヴォンヌの独白で、ようやくこの作品の真髄に気づいて「やられた…」と舌を巻きました。
社会の枠組みの中では、大人はみな何かに囚われているのかもしれないですね。
ずっと「少女たちが格子なき牢獄の中にいる」と見ていたから、この見る側の視点を変える逆転の発想はなかったです。
面白い作品でした。
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