映画「世界から猫が消えたなら」あらすじと感想【ネタバレあり】
佐藤健さんが一人二役を見事に演じたファンタジックなヒューマンドラマです。
共演は宮崎あおいさん、濱田岳さんなど。
明日死ぬとしたら、何をしたいか。
生き延びるために大切なものを失うことになったらどうするか。
究極の選択を、観ている人にも問いかけてきます。
新品価格 |
あらすじ
片田舎で郵便配達員をしている主人公の “僕” は、帰宅途中で急激に激しい頭痛に襲われ倒れる。
医者に診てもらうと、脳に悪性腫瘍が出来ていて、すでに手遅れの状態だと余命宣告を受けた。
心では激しく泣き叫ぶが、実際には呆然自失に陥るのだと身をもって知る。
絶望感でいっぱいになりながら帰宅すると、自分と瓜二つの悪魔が待ち構えていた。
悪魔は “僕” は明日死ぬと予言し、何か大事なものをひとつ失うごとに一日ずつ寿命を延ばしてあげる、と取引を持ち掛けてきた。
まずは電話。
この世から電話を消すから、最後にかけたい相手にかけな、と促す悪魔に従い、“僕” はもう別れた “彼女” にかけた。
電話をして呼び出し、直接会って話をして別れた。
直後に電話はなくなり、公衆電話ボックスも消え、携帯電話ショップは文房具店に早変わりした。
“彼女” に会いに行くと、 “僕” のことを覚えていなかった。
まるで初めから存在していなかったかのように…
次に映画。
“僕” にはいつも観るべき映画をチョイスしてくれるツタヤという親友がいる。
大学時代から続く関係で、仕事帰りは彼が働くレンタルビデオ店で彼のチョイス作品を借りていくのが日課になっていた。
この世で最後の一本…
ツタヤなら何を観るか聞くが、そんなものはないと一蹴される。
しかし真剣に訴える “僕” のためにツタヤは必死に考え、探してくれるが見つからない。
何も観られないままタイムリミットが来てしまった。
映画館は更地になり、ツタヤのレンタルビデオ店は本屋になってしまった。
そしてツタヤは “僕” に店員スマイルで「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」と声をかけてきた。
ツタヤからも “僕” の記憶が消えてしまっていた。
そして時計が消えて、 “彼女” と一緒に行ったアルゼンチンで出会ったトムさんとの思い出から “彼女” が消える。
大切なものを失い、周りの人たちから自分の存在がどんどん消されていく焦燥感に寂しさを募らせる “僕” に、悪魔はついに “僕” の愛猫・キャベツを可愛がりながら、世界から猫を消す、と言ってきた。
世界から猫が消えたなら DVD 豪華版(特典DISC付きDVD2枚組) 新品価格 |
感想
小学生の頃の “僕” が、レタスの段ボールに入れて捨てられていた仔猫を拾って以来、この家族の中心にはいつも猫がいました。
最初の猫・レタスは母のことが大好きで、母の病気が分かると同時に自身も癌に罹り、母より先に逝きます。
時計職人の父は、仕事一辺倒であまり家庭を顧みることはなく、母と “僕” とは一線を画しているように無口で不愛想です。
しかしレタスが逝ってしまい病が悪化して床に臥せることが多くなった母を思い、父はレタスに似ている猫の里親になります。
“僕” には「母さんには内緒だぞ」と言って、捨て猫のように装って玄関の前に置いて母に見つけさせる演出をします。
今度の段ボールにはキャベツと書かれていたので、名前はキャベツ。
これも父の誘導です。
父の仕事場には取り出したキャベツが山積みに。
臥せっていた母にも笑顔が戻ります。
最後の家族旅行にもキャベツはずっと母の膝に乗って大人しくしていました。
そして “僕” は母からキャベツを託されます。
猫。ペット。
存在しているだけで癒されますね。
「子はかすがい」は夫婦の絆を強めるものですが、「猫はかすがい」は家族の絆を強めます。
猫に限らず犬でもウサギでも、みんなで協力してペットの世話をし可愛がると、家族仲が良くなりますよね。
動物嫌いな人が家族にいたら仕方ないですが、経済的に余裕があってみんな動物好きなら、やっぱりペットはいたほうがいいですね。
ふだん何を話していいか分からないお父さんお母さんや思春期の子供たち。
ヘタすると機能不全家族になってしまうかもしれないところを、ペットを介して笑いながら和やかな会話ができるかもしれません。
疲れも和らいでいくんですよね、ペットがいると。
猫がいる会社とか本当にうらやましいです。
生産性が上がるだろうな…
前の猫が亡くなってから11年。
ペットロスでひどく落ち込んだけれど、また猫を飼いたいです。
猫を消すと言われた “僕” は、猫と共にあった亡き母の思い出や、不器用すぎて見えていなかった父の愛情に気づきます。
人間は衣食住が足りれば、生きていくことが出来ます。生命を維持するだけは。
だけど、生きていく上で必ずしも必要ではないものこそが人生には必要なんですよね。
“僕” はそれに気づき、猫は消さない、と決断します。
自分の死を受け入れることにしたのです。
そして悪魔にはっきりと「この世界はかけがえのないもので満ちている」と笑って言います。
電話も映画も時計も猫も、 “僕” のかけがえのないものでした。
この世から消えてなくなった世界でただ生きていてもつまらない。
ならば楽しみを味わいながら死んでいくほうがいい、ということかもしれません。
それにまつわる思い出も含めて。
誰にしてみても、自分にとって大切な、かけがえのないものって、生命維持のためではないムダなものの中にあるのではないかと思います。
ムダ、と言ってしまうと語弊があるかもしれませんが、「合理的に考えた場合、生きていくためには不必要なもの」です。
衣食住にしても、本来なら服は気候や気温に合わせて着用すれば事が済むけれど、ファッションは楽しみたいですよね。
髪型やアクセだってこだわりたい。
食べ物だって、ただ生きるためだけなら味付けは必要ないし、食器や盛り付けにこだわったり、ましてや花の形にするような飾り切りなんかも必要ないけど、どうせなら楽しく美味しく食べたいですね。
住居だって、ただ寝るためだけなんてイヤです。
好きなインテリアにしたいし。
そんなふうな、ちょっとした楽しみの部分。
それだってかけがえのないものです。
そしてそんな大切なものや事が多くあるほど、自分の世界は楽しくて美しいものだと思えるのかもしれません。
レタスちゃんもキャベツちゃんも、ものすっごい可愛いです。
もしかしたら同じ猫ちゃんだったのかもしれません。
かなり大人しくて人懐っこい子みたいで、抱っこされたり自転車のカゴに乗せられても嫌がらずにチョコンとしています。
タオルを「ET巻き」にされているのも、萌え… (;´Д`)ハアハア
佐藤さんやお母さん役の原田美枝子さんの膝の上でも気持ちよさそうに座っていて、全編通して顔がニヤケっぱなしになりました。
表情筋がかなりだらしないことになっています。
映画全体としては、コレはちょっとなぁ…と思う部分もありました。
“僕” と “彼女” の出会いが間違い電話からですが、電話しながらDVDの音量をあげる。
で、聞いた “彼女” が映画タイトルを一発で当てた上にネタバレまでする。
かなり苦しい出会い演出です。
他にも、アルゼンチンへの場面転換が唐突過ぎて面食らったり…
だけど、どの俳優の演技も上手かったことと、猫の可愛さで帳消しです。
可愛いは最強。
あまりストーリーに関係のある舞台ではありませんでしたが、世界最大瀑布・イグアスの滝はやっぱり壮大です!
疲れたときによくyoutubeで動画を見るんですが、もう画面からマイナスイオン出てる感じで癒されるんですよ、コレが。
あんなに凶暴な轟音と勢いなのになぜだろう…
死ぬ前に一度は見に行きたいと改めて思いました (あ、死ぬ前にやりたいことあった)
父親役 奥田瑛二 他出演作品
映画「五番町夕霧楼」 (1980年版) あらすじと感想【ネタバレあり】火も水もこわい
こちらもよろしくお願いします
「ボブという名の猫 幸せのハイタッチ」あらすじと感想【ネタバレあり】
シュレック・スピンオフ「長ぐつをはいたネコ」あらすじと感想【ネタバレあり】
世界から猫が消えたなら Blu-ray 豪華版(特典DISC付きBlu-ray2枚組) 新品価格 |