映画「ブラックブック」あらすじと感想【ネタバレあり】飲食注意 特にカレー
ポール・バーホーベン監督が久しぶりに故郷オランダで撮った戦争映画です。
主演はドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」で <紅の女> を演じたカリス・ファン・ハウテン。
「善き人のためのソナタ」のセバスチャン・コッホが共演しています。
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あらすじ
1956年10月。
イスラエルにあるキブツに「聖地ツアー」の小型バスがやってきた。
夫と一緒に参加しているロニーはそこで懐かしい顔と再会する。
ドイツ占領下時代のオランダで知り合ったエリスがそこにいた。
現在の名前はラヘルだという。
ロニーが去った後、ラヘルは当時のことに思いを馳せる。
ユダヤ人の彼女は、家族とは離れ離れに隠れ家で暮らしていた。
元歌手の彼女が川べりで自分の歌を聞いているとき、ボートに乗った青年ロブと知り合う。
楽しく会話をしていると零戦が上空を飛び、隠れ家に爆弾を落とした。
行き場を失くした彼女をロブが匿うが、オランダ警察のファン・ハインという男が現れ、ラヘルたちを南に逃がすという話を持ち掛けてきた。
荷物は少なめに。だが現金や貴金属は多めに、と助言される。
彼女はその話に乗り、父の財産を預かっている公証人のスマールの元に行って現金をもらう。
南に向かうボートの船着き場でラヘルは家族と再会した。
父も母も無事で、弟も盲腸の手術をしたばかりのため早く歩くことはできないが生きている。
しかし喜び合ったのも束の間、ボートは待ち伏せしていたナチ親衛隊中尉フランケンにより銃撃を受け、家族もロブも殺された。
ラヘルは川に飛び込んで難を逃れたが、フランケンたちが皆の遺体から現金や貴重品を略奪していくのを見て復讐を誓う。
レジスタンスの協力を得て名前をエリスに変え、地下活動に身を投じた。
リーダーのヘルベンの命令で、ハンスを中心にした計画に参加。
ハンスの婚約者、という役割で汽車に乗ったとき、ピンチを切り抜けるために入り込んだコンパートメントで、紳士的なナチ親衛隊大尉ムンツェと知り合う。
もう会うこともないと思っていたが、ヘルベンの息子ティムを含むレジスタンス仲間三人がナチに捕まってしまい、ラヘルはムンツェの愛人として潜入しスパイ活動を行うように要請される
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感想
無駄がなくてサクサク進みます。
裏切りに次ぐ裏切りの応酬に、先が読めなくて集中して見入っちゃいました。
誰が味方なのか。誰が敵なのか。本当に分からなくなります。
家族が殺されたのに涙も流れない、とラヘルは言います。
自分は心が冷たいのでは、と自己嫌悪しているように見えましたが、ジェットコースター並みに人生が猛スピードでアップダウンしている状況です。
落ち着く暇がないから悲しみに浸ることもできないために泣けないだけだと思いました。
お葬式もそうですよね。
一番泣きたい人が一番やらないといけないことが多くて、ひと段落するまで泣く暇がない、というか暇を与えてもらえない仕組みになっているな、と思っています。
ラヘルはもう、お葬式どころか何か月も一息つく暇もなく、終わりの見えない戦いに翻弄されていました。
上手くムンツェの愛人になってナチのオランダ支部で働き、ここでフランケンの愛人になっているロニーと知り合います。
そしてここでスマールと再会。
彼から盗聴器を渡されてフランケンの部屋に仕掛けました。
盗聴によってファン・ハインが実はフランケンの手下で、裕福なユダヤ人を殺させる手筈を整えてその分け前を受け取っていたことを知ります。
…どおりでボートに乗らなかったはずだし、乗り込むときに掛けていた板を外したはずですね。
コイツの裏切りはわりと分かりやすい。
だけど、コイツに「裕福なユダヤ人」を教えていたのは誰なのか、というのが後半の焦点になります。
タイトルのブラックブックは、このリストが書いてある黒革の手帳のことです。
だいぶ後半になってから出てきます。
フランケンと通じていたのはレジスタンス側にもいました。
ラヘルのことも窮地に陥らせる狡猾な人物です。
伏線の張り方も非常にうまく、インスリンとチョコレートの相殺関係や、ラヘルの弟が盲腸の手術を受けたことなどの設定がラスト近辺で活きています。
バーホーベン監督作品というと「エロ&チープ」が特徴とか思ってましたが、意外とチープ感は低めでした。
エロはあるけど… あ、でもヌードは多いけど結合シーンとかは少な目かもしれない。
「氷の微笑」と比べたらソフトなもんです。
でも視覚的にキモいシーンはあります。
大量の汚物をぶっかけられるんですよ、ラヘルが。
もちろん疑似ですけどね (本物だったら大変なことになる)
それでもお食事中にぎぼぢ悪ぐなるかもしれません。
偶然ですが私、この映画観る直前にカレー作って食べていたものだから「セーーーフ…」と心底思いましたもん (;´Д`)
このシーンの他にも、終戦後にナチスに友好的・協力的だった人たちが糾弾される姿も容赦なく描写しています。
愛人になっていた女性たちが丸刈りで晒し者にされる痛々しい姿… 写真で見たことあります。
彼女たちを尻目に、早々にカナダ人将校の恋人になって凱旋パレードの車に乗るロニーの立ち回りの上手さに羨ましさを感じました。
すごいな、この人…
そして本当の裏切り者に容赦ない復讐を果たし、キブツで幸せに暮らしているラヘルですが、また戦禍に巻き込まれることを示唆するラストになっています。
1956年のイスラエル。第二次中東戦争です。
「苦しみに終わりはないの!?」と辛い胸中を叫んだ彼女の言葉はそのとおりである、という救いのない終わり方ですが、見ごたえのある映画でした。
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