映画「禁じられた遊び」あらすじと感想【ネタバレあり】子供の遊びはエスカレート
1952年に制作されたルネ・クレマン監督の名作です。
儚いメロディーの主題曲も有名になりました。
当時5歳で主演したブリジット・フォッセーは、一時期引退していましたが大人になってから復帰し今でも現役です。
同主演のジョルジュ・プージュリーも子役から大人の俳優に脱皮し、ルイ・マル監督のデビュー作にして傑作「死刑台のエレベーター」にも出演していました。
あらすじ
1940年7月。
ドイツ軍の攻撃を避けるため疎開する一般人たちの行進に、容赦のない空爆が落とされた。
両親と一緒に車で移動していた5歳の少女ポーレットも身をすくめる。
爆撃のせいでエンジンが故障し、一家は車を捨てて歩いて進むことにする。
しかしポーレットの愛犬が彼女の腕からスルリと抜けて、橋のほうまで逃げてしまった。
慌てて追いかけるポーレットに、両親も彼女を追う。
列から離れたことで敵軍からの機銃掃射の的になってしまい、両親は死亡した。
“死”というものに実感がないポーレットは、やはり撃たれて痙攣している愛犬を抱いて列に戻る。
近くの人の荷車に乗せてもらうが、愛犬は死んでしまい、隣に座っている女性に愛犬の亡骸を川に捨てられてしまう。
渋滞にハマったところでポーレットは荷車を下りて川から愛犬の死体を拾い上げた。
畜産農家を営んでいるドレ家では、牛しかいない牧場に見たことのない馬が紛れ込んでいることに家族全員が驚いた。
捕獲しようと試みた長兄のジョルジュが、その馬に蹴られて重傷を負う。
その騒ぎで牛が一頭逃げ出してしまい、末っ子のミシェルが追いかける。
小川のほとりで牛に追いつくと、木の陰に隠れるように佇むポーレットと遭遇した。
両親が死んだと聞いたミシェルは、ポーレットを家に連れて帰る。
その際ミシェルが、もっと可愛い犬をあげるから、死んでいる子犬は捨てて行くように言うと、もう次の犬に興味を示したポーレットはためらわずに愛犬を捨てた。
ドレ家のみんなはポーレットを一時的に保護した。
屋根裏に寝床を用意してやると、暗闇を怖がって泣きだしてしまう。
ミシェルは、自分の名前を大声で呼べばすぐに駆けつける、とポーレットに約束した。
ポーレットは毛布に包まりながら、ミシェルから埋葬について教わる。
捨ててきた愛犬が雨ざらしになることが急に悲しくなり、翌日ひとりで愛犬のところに行く。
通りがかりの神父から簡単な祈りの言葉を教えてもらった。
ひと気のない水車小屋に行き、埋葬のための穴を掘っていると、彼女を探しに来たミシェルもやってきて一緒にお墓を作ってくれた。
そのとき初めてお墓には十字架を立てるものだと知る。
愛犬だけでは寂しい。
そう思った二人は、それ以来モグラやヒヨコなどの死骸を埋めてお墓を作り、祈りを捧げる遊びに熱中し出した。
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感想
愛犬の死を悲しんでいても、新しいものに興味が湧けばアッサリ捨てる。
ひとつお墓を作ると、もっともっととエスカレートする。
喜んでもらいたくて、「すごい」と言ってほしくて、禁忌を冒してでもポーレットが欲しがる綺麗な十字架を手に入れようとする。
ジョルジュが亡くなったときも、彼の死を悼むより霊柩馬車や教会・墓地にある十字架に興味津々。
子供の純真無垢ゆえの残忍さを映し出しますが、こう書いてみると意外と大人になってもその気質が抜けないものだな、と思います。
ただ、大人になれば謙遜も常識も覚えるし、自分の欲望を隠すのも上手くなる。
それが出来ないと犯罪に走る、恥ずかしい大人になってしまうんですね。
この映画が名作たる所以は、やはりラストシーンの俊逸さです。
でもそこだけを切り取るのではなく、そこに至るまでの積み重ねがあるからこそ胸を打つんですよね。
どんなにミシェルが頼み込んでも、ドレ家でポーレットを育てることはできないし、戦災孤児はみな孤児院に送る規則となっていれば、大人は規則通りに動くことしかできません。
子供には物事を思い通りにできる力はないのです。
でもポーレットは、大声でミシェルを呼べば来てくれる、という約束を信じて、来るはずのないミシェルを探して叫び続けます。
このあとポーレットがどうなったのかは観客の想像に任されているラストです。
こういうラストは余韻を残しますね。
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