映画「アモーレス・ペロス」あらすじと感想【ネタバレあり】犬のような愛は因果応報を招く
「21g」「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥの初監督作品です。
三つの物語の主人公たちを、交通事故の瞬間に絡ませることで、それぞれの人生を映し出している作品です。
「007 / ダイ・アナザー・デイ」のエミリオ・エチェバリアや、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のガエル・ガルシア・ベルナルなどが出演しています。
そして犬たちが象徴的に使われていました。
あらすじ
【オクタビアとスサナ】
兄嫁のスサナに横恋慕しているオクタビアは、家から飛び出した飼い犬コフィーがギャングリーダーの闘犬を倒したことで因縁をつけられる。
そこでコフィーを闘犬にして金儲けすることを思いつく。
金を貯めてスサナと駆け落ちするためだ。
兄のラミロは凶暴な気質で、スサナやオクタビアを恐怖で支配している。
昼はスーパーの店員として真面目に働いているが、夜は強盗を働いているのだ。
コフィーは毎回勝ちをおさめて金も順調に貯まる。
いよいよ駆け落ちしよう、とスサナを誘うが、彼女はラミロと共に逃げてしまった。
金も持ち逃げである。
怒り狂うオクタビアだが、翌日の闘犬試合は棄権できない。
コフィーが善戦する中、毎度負けっぱなしのギャングリーダーはコフィーを銃で撃った。
オクタビアはリーダーをナイフで刺し、コフィーと友人を乗せて車で逃げるが、追ってくる手下たちを撒くために無謀運転を繰り出して、信号待ちの車に衝突してしまった。
【ダニエルとバレリア】
出版社社長ダニエルと不倫中のスペイン人モデル・バレリア。
雑誌「エンチャント」のイメージモデルとしてメキシコに来ると、ダニエルがアパルトマンを手配してくれていた。
加えてダニエルは妻子を残して家を出ており、バレリアと同棲するという。
嬉しさに舞い上がるバレリアだが、夕食の買い出しにひとり車で出かけ、信号待ちをしていたところでオクタビアの車に衝突されて重傷を負った。
その日から車いす生活になったバレリア。
ダニエルが仕事に行っているときに、飼い犬のリッチーにボールを投げて遊ばせていると、床に空いた穴に入ってしまったリッチーが出られなくなってしまう。
【エル・チーボとマル】
犬を多頭飼いしている老人エル・チーボは、普段はゴミ拾いをしているが実は殺し屋である。
二十数年前に生き別れた娘マルのことをずっと心に残しており、時折物陰から彼女を見つめていた。
ある日、仲介人の刑事を通じて殺しの依頼がくる。
刑事とともにやってきた男グスターボは、裏切り者のルイスという男を殺してほしい、と言ってくる。
請け負ったエル・チーボは翌日さっそくルイスの後をつけ、銃を取り出そうとしたところで、目の前の交差点でオクタビアとバレリアの車が衝突する現場を目撃する。
救助するフリをしながら、オクタビアの懐から財布と現金を持ち去ろうとしたところで重症のコフィーを発見。
コフィーを連れ帰って手当てする。
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感想
犬が酷い目に遭うのが見ていて辛かったです…
苦しんでいる姿が、本当に傷つけているのかな、と不安になりました。
だけどストーリー自体は面白くて、因果応報の物語になっています。
第1章が事故るまで、第2・3章が事故った後がメインになっていて、別々の主人公たちだけど同時進行ではありません。
第1章のうちからエル・チーボがウロウロしていたり、バレリアがテレビに出演していたり、第3章でラミロがスサナと一緒に歩いていたり、つながりはないけれどニアミスをしているので多少の時間の被りはありますが。
オクタビア、バレリア、エル・チーボ、全員後ろ暗いところがある人たちです。
事故による影響をみんな受け、それが彼らの人生の報いになっています。
バレリア同様オクタビアも重傷でした。
同乗していた友人のほうは即死です。
強盗をまだ続けていたラミロはその場で警察官に射殺され、その葬式に出たオクタビアは頭に大きな傷跡がある上、松葉杖をついています。
遺されたスサナにまた言い寄るものの、彼女は最初からオクタビアに好意を持っていませんでした。
手ひどくフラれて落ち込みます。
バレリアもまた車いす生活で、しかもヤブ医者にかかったためにずっと足の痛みがとれずにイライラしっぱなし。
可愛がっているリッチーが床下から助けを求める鳴き声を上げても、助けられないもどかしさも相まってダニエルとの仲にヒビが入ります。
そしてモデルなのに足を切断することになり、窓から見えていた自身の広告が外されていることに絶望しました。
ダニエルも妻子の元に戻りたくても戻れない現状。
そしてコフィーを連れ帰ったエル・チーボ。
献身的に世話をして回復させましたが、オクタビアによって闘犬にさせられていたコフィーが他の犬たちを殺してしまう、という皮肉なオチです。
泣き叫んで怒りを露わにするエル・チーボですが、人間より犬を愛している彼はコフィーを殺すことができません。
しかし大切なものを殺されたことで、非情な殺し屋だった彼に変化が訪れました。
ルイスを拉致してグスターボと引き合わせます。
ふたりは異母兄弟でエル・チーボいわく「カインとアベル」の関係でした。
エル・チーボはふたりを殺さず、彼らの間に銃を置いて、街から出ていきます。
このふたりが最後どうなったのかが分からずじまいなのが気になるな~。
一応エル・チーボに関しては、まったく新しい人生をやり直す、という多少の救いを感じる終わり方でした。
犬好きには少々ツラい映画ですが、人生の皮肉が効いている面白い作品です。
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