「悪魔が夜来る」あらすじと感想【ネタバレあり】裏側に反ナチメッセージがあるファンタジー
マルセル・カルネ監督のファンタジックなラブロマンス作品です。
代表作「天井桟敷の人々」と同じ脚本家・撮影スタッフが登用されており、アルレッティも出演。
後にフランス映画界を代表する俳優に成長するアラン・キュニーのデビュー作です。
ヒロインも新人マリー・デアを起用。
ノンクレジットですが、シモーヌ・シニョレも出ているそうで… どこに出ているか分かりませんでした (;´∀`)
あらすじ
1485年5月。
人間たちを絶望させる狙いで、悪魔は2名の手下を地上に遣わした。
その2人、ジルとドミニクはユーグ公の城にやってきた。
娘のアンヌ姫と騎士ルノーの婚礼に湧き、連日宴会を催している城内に吟遊詩人として入り込む。
城では芸人たちが隅のテーブルに固まり、自分たちの出番のときだけ前に出る。
人の見た目で笑いをとる芸に、花婿ルノーや父ユーグ公、他の出席者たちも爆笑する中、アンヌだけはウンザリしていた。
次に進み出たジルたちは、ロマンティックな詩を歌いあげてアンヌの興味を惹きつけた。
ルノーにはそれが気に入らない。
ダンスタイムに移り、アンヌとルノーの間にはすでに不和の雰囲気があった。
そこへドミニクが撥弦楽器を掻き鳴らすと時間が止まり、ドミニク自身は男装から美しいドレス姿の女性になる。
周りが止まっている中、ジルはアンヌを、ドミニクはルノーを動けるようにして誘惑し、それぞれを連れ出した。
愛を囁き、ドミニクはルノーを陥落させたが、ジルはアンヌを本気で愛してしまう。
その後ユーグ公まで誘惑してルノーと決闘させるまでに持ち込んだドミニクに対し、一途にアンヌを愛するジルに怒った悪魔は、自ら城にやってきて事態を引っ掻き回すことにした。
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感想
カルネ監督だけあって、芸術的な映像美が素晴らしいです。
15世紀フランスが舞台であり、当時の衣装などに細部まですごいこだわりを感じました。
ミニスカワンピのような上部に、ピッタリタイツの男性たちの衣装。
高位貴族の下で働く男性たちは、一様に前髪ぱっつんのおかっぱ頭で統一しています。
女性の髪を覆う布なんかにも当時の様子を感じ取れました。
ドレスの優雅さは言わずもがなです。
思いっきりタイムスリップしたかのような衣装や城内の様子を描きつつ、愛を語らう庭園の泉などでは自然の美しさを活かしています。
スタジオ内だったとは思うのですが、ロマンティックな雰囲気作りがやはり上手いんでしょうね。
悲劇の恋人たちを映し出すのに、美しい風景の演出はやはり欠かせません。
ファンタジーなのでコミカルなところもありますが、全体的には愛し合うふたりの「美しい悲劇」の話です。
しかし根底には、反ナチスのメッセージが込められていました。
悪魔側がヒトラーたちナチス・ドイツ軍。
人間たちは蹂躙されるフランスそのもの。
ジルとアンヌは、最後は悪魔に石像に変えられてしまうけれど、彼らの心臓の鼓動は止まりませんでした。
自由を奪ってもその魂までは奪えない、と訴えています。
占領下の中でも「天井桟敷の人々」を作り上げたカルネ監督の矜持は、この作品にも出ていました。
でもこの裏側のメッセージに気づかなくても、映画として十分楽しめる作品です。
ストーリーも普通に面白かったし、映像美も堪能できる良作でした。
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