映画「ビフォア・サンセット」あらすじと感想【ネタバレあり】9年目の真相
2002年公開。
前作「ビフォア・サンライズ」から9年。
続編の話を聞いたとき、本当に驚きました。
主演二人は前作同様イーサン・ホークとジュリー・デルピーです。
前作のあと、デルピーがホークのこと悪く言っている記事を読んだことがあったので「和解したのかな」と思いました。
顔に似合わずいろんな人にズケズケ噛みつく毒舌デルピーたん (;^ω^)
そのキャラが昔は面白くて好きでしたが、大人になってみると「う~ん、仕事減るの当たり前だよな…」と思うようになりました。
「ビフォア・サンライズ」の記事でも書きましたが、この後さらに「ビフォア・ミッドナイト」という作品が作られています。
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あらすじ
印象に残る一夜を共に過ごしたジェシーとセリーヌは別れ際に、半年後またウイーンの駅での再会を約束した。
しかし当日セリーヌは現れず、二人の関係はそれっきりになっていた。
あれから9年。
作家になっていたジェシーは、あの夜のことを書いた本を出版し、パリでサイン会を行っていた。
小さな本屋の一角で、記者たちからの質問に答えているとき、会場の片隅にセリーヌが来ていることに気づいて動揺する。
サイン会が終了して帰国の飛行機が出る時間まで1時間半。
その短い時間を利用してジェシーはセリーヌを誘い、二人でパリを散策しながらお互いのことを話していく。
あの日セリーヌが来なかった理由。
現在の仕事や私生活について。
そんな話をしつつも合間に深い話をして互いに意見を言い合い、耳を傾ける。
ウイーンでの夜のように会話が途切れることなく弾む。
しかしジェシーが帰国しなければならない時間は刻一刻と迫ってくる。
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感想
前作のラストで再会の約束をしていた二人ですが、列車の出発時間が間近に迫っている中で慌てて約束したものだから、連絡先を交換する余裕がありませんでした。
「いいや、とにかく半年後ここで会えるんだから」という結論に達して、互いの電話番号もしらないまま別れます。
(94年だとまだケータイがそんなに普及していない時期だったかも。当然メールも一般的ではなかった)
そのために、約束の当日セリーヌはブタペストに住む祖母のお葬式のためにウイーンに行くことが出来ず、それをジェシーに知らせることも出来ませんでした。
そしてジェシーも駅でずっと待っていて、駅の伝言板にメッセージを書いて2・3日滞在していたそうです。
「連絡先を聞いておけばよかった」と二人とも後悔しました。
しかもウイーンの夜から2年後の、96年から99年までセリーヌはニューヨーク大学に留学しており、ジェシーは98年からニューヨークで暮らしていると知り、ここでも連絡先さえ聞いておけば向こうで会えたのに… と二人とも後悔しきりです。
二人とも、二度と会うことはない、と思っていた夜でした。
だから敢えて聞かなかったという側面もありました。
でもさ、一応聞いておこうよ、と思いましたね。
前作ラストは二人が会ったのかどうかは観客に委ねられていました。
しかし今作でその答えが出て、やっぱりロマンティックは現実に勝てないものだな、と世知辛さが身に沁みます。
9年前、約束が果たされなかったことが二人の間にわだかまりを残していました。
ウイーンでのあの一夜すら、お互いになかったことにしよう、とこの9年の間で思いこもうとしていた時期もありました。
あのときの高揚した気持ちが、イヤな思い出に変わってしまったからですね。
だけどこうして再会し、なぜ会えなかったのか分かり、そしてまた新たな気持ちで絶え間ないおしゃべりを楽しみ、二人の恋愛感情はふたたび燃え上がります。
セリーヌを家まで送る途中の車の中で、ジェシーは温かな笑みを浮かべて見出しのセリフを口にします。
待ちぼうけを喰らい、失意を胸にしながらウイーンから去ったことはジェシーにとって辛い記憶でした。
だけど楽しい記憶に塗り替えることはできる、と確信を持つことが出来たのですね。
そんなジェシーは「年をとることは “今を大切にできる” から好きだ」と言います。
いまそのときの感情・経験をじっくり噛みしめることができる。
過去ではなく今を大切にすることが、苦い思い出を上書きすることに役立っているのだと思います。
さらにセリーヌが「今日がもし最後の日なら、なんの話をする?」と問いかけます。
ジェシーが書いた本の話? セリーヌが興味を持っている環境問題の話?
どれも違う気がする、と二人とも意見が一致します。
最後の日。
自分の身に置き換えてみたら、いろいろ話したいことがあっても、どれもくだらないことに思えて逆に何も話せなくなってしまうかもなぁ、と考えてしまいました。
だけど過去については、話そうとすら思わない、と思います。
いい思い出だけで胸を満たしたい気持ちが強くなる気がするからです。
最後の日のはずなのに、なぜか未来志向。
誰にでもイヤな記憶・苦い思い出はあります。
だけど塗り替えられる可能性もまたあります。
過去に囚われすぎないことが秘訣なのかもしれません。
この9年の間にジェシーは結婚し、息子も生まれていました。
しかし夫婦仲は冷え切っていて、家の中は笑いも温かさもなく悲惨だとジェシーは言います。
妻のことが嫌いなわけではなく、むしろ彼女には幸せになる権利がある、と言い切ります。
本当は自分と別れて、他の男性と一緒になったほうがいいのだとジェシーは考えていました。
ジェシーにとって息子の存在だけが心を和ませるものであり、そして息子のためならどんなに辛いことも我慢できると告白するけれど、その目は涙で潤んでいました。
そのあまりにも切なげな様子に、慰めようと手を伸ばしかけたセリーヌも、逡巡した末、その手を引っ込めます。
うかつに慰められないほどの悲壮感がそこにありました。
どういう家庭を築くかは、その夫婦が互いにどういう考えを持っているかで決まるので、他人が一概にどうこう言えないのですが…
笑いと温かさがない家庭というのは、個人的にすごくイヤです。
毎日何気なく過ごしていても、9年もの年月ではそれなりにいろいろあり、人も成長していきます。
経験から知識や知恵を身に着け、賢くなると同時にスレてもきます。
年をとるほど皮肉屋になっていくというのも、いろいろ揉まれて賢くなりすぎたからなのかもしれません。
セリーヌは「お互いスレちゃったわね」と笑います。
自分が世間ズレしてきたことを笑い飛ばせられれば人生上々です。
前作はこちら
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