映画「奇人たちの晩餐会」あらすじと感想【ネタバレあり】バカって言うほうがバカ、は真実
フランシス・ヴェベール監督が自身の舞台劇を映画化した1999年公開の作品です。
笑い者にするために招待されたおバカさんをジャック・ヴィルレ、そのバカを笑い者にしようとしたのに逆に翻弄されるエリートをティエリー・レルミットが演じています。
あらすじ
若くして出版社社長となっているピエール・ブロシャンの楽しみは、毎週水曜日に行う友人たちとの晩餐会だ。
各人がそれぞれ“コレだ”というバカを連れてきて、そのバカぶりを笑って品評する、という悪趣味な会である。
もちろん招待されたバカたちは会の目的など知らず、自分が打ち込んでいる趣味の知識を嬉々として披露していた。
水曜日が近くなり、他の友人たちはブーメラン・マニアなどのバカたちを集めたがピエールはまだ見つけられないでいる。
しかし晩餐会に参加しない友人が、出張中の列車の中で究極のバカを見つけてピエールに報告した。
マッチ棒で模型を作ることを趣味にしているフランソワ・ピニョンという男だった。
財務省勤めで、ドジで話好き。
うってつけの人物だ。
ピエールはさっそくピニョンを晩餐会に招待するが、その前に一度顔合わせをしておきたい、と願い出た。
水曜日はまずピニョンを自宅に呼んでバカぶりを確認してから、ふたりで一緒に晩餐会に行くことにしたのだ。
優勝はもらった、とほくそ笑むピエールだったが、その前日にゴルフを楽しんでギックリ腰になってしまった。
翌日。
腰は痛むけれど晩餐会に行く気はマンマンのピエールに、妻のクリスティーヌは呆れ果てて家を出て行ってしまう。
自宅まで診療に来たソルビエ医師からも晩餐会はキャンセルして療養するように言われた。
帰宅するソルビエと入れ違いに、呼び出していたピニョンがやってきた。
バカぶりを楽しめる、というピエールの期待に応えるように、ピニョンはマッチ棒模型の写真を次々と見せ、個性的な留守電メッセージを聞かせて、ユニークな感性を次々と披露した。
やはりぶっちぎりで優勝できる逸材だ。
ピエールは腰の痛みを我慢して晩餐会にピニョンを連れて行こうとする。
しかしそこでクリスティーヌから電話が入り、もう二度と帰らない、と別居を申し出された。
ショックを受けて座り込むピエールを、ピニョンは何とか慰めようとする。
実はピニョンも妻に捨てられたバツイチ男だったのだ。
クリスティーヌはきっと、学生時代から交流があるルブランという共通の友人の家に行ったに違いない、とピエールは考えた。
そこでルブランに電話するも、彼女は来ていない、という返事だった。
ピエールは晩餐会を諦めて、ソルビエへの電話をピニョンにお願いした。
しかしピニョンは番号簿を一行間違えて、ピエールの浮気相手マルレーヌに電話してしまう。
マルレーヌをピエールの妹だと勘違いしたピニョンは、ピエールがギックリ腰になったこともクリスティーヌが出ていったことも明け透けにしゃべってしまった。
心配したマルレーヌは、すぐに駆けつける、と言って電話を切った。
マルレーヌに来てほしくなかったピエールは、イラついてピニョンにもう帰るように強く言い渡した。
部屋を出たピニョンは、入れ違いにピエールの部屋に入ろうとするクリスティーヌをマルレーヌだと勘違いし、彼女を追い返してしまう。
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感想
80分という短い時間で怒涛の展開をスムーズに進めていく良作です。
この後もピニョンはガンガン引っ掻き回していき、ゲームでいったらピエールのライフはもうゼロに向かってどんどん減っていく勢いです。
でも全部、自業自得だから笑ってしまいます。
実際、この後やってくるルブランも「バカにするために呼んだバカに振り回されてるwwww」と無遠慮に笑いますしね(;´∀`)
帰れと言われてもグズグズしてピエールの傍から離れようとしないピニョンは、ピエールからしたら煩わしくてイライラする存在です。
それは分かる。
だけどピニョンは善意の人ってだけなんですよね。
腰痛で動けない、妻に三行半を突きつけられてヘコんでいる。
そんなピエールを本気で心配し、心から役に立ちたい、とピニョンは思っています。
悪意のほうが前面に出てしまっているピエールとは対極にいる人です。
勘違いで突っ走ったり、本来の目的を忘れて電話を切ってしまったり…
確かにおバカさんな部分があるのですが、それが結局バカをバカにしているピエールのほうがバカ、という構図を浮き彫りにしている見事な脚本です。
結局タイトルの晩餐会からは外れ、出ていった妻を取り戻そうと奮闘するおバカさん達、というストーリーラインになっています。
ピニョンが財務省勤務であることも後半で活き、しかもピエールをまたもや別の窮地に立たせることになります。
そんなドタバタの末、晩餐会の目的と招待された理由を知って傷つくピニョンが、それでもクリスティーヌに電話してピエールを許すように伝えるシーン。
ピニョンがただのバカではなく、実は賢くて思いやりのある愛すべき人物だと訴えかけます。
そしてピエールも反省し、もう人に向かってバカなんて言わない、と約束します。
んがっ、オチは結局ピエールがドジを踏んだピニョンに「このバカ」と言って終わり。
やっぱりコメディはこうでなくちゃね、と思うと同時に、人間そう簡単には変われないってことだよな、と思い知りました(;^ω^)
この映画は、どちらかというと会話や動きより“間”で笑わせています。
要件を言わずにくだらないことだけ言って電話を切るピニョンとそれを驚きの顔で見るピエール。
凄腕の査察官をうっかり家に呼んでしまったとき。
ピエールの妻の浮気相手だと思っていた男は、実は査察官の妻の浮気相手だと分かったとき。
そんな「あ… (お察し)」と観客側が気づくときの絶妙な“間”がこの作品の面白さを爆上げしています。
お笑いには“間”がかなり重要なんだな、と改めて思いました。
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