大物漫画家も七転八倒していた「松苗あけみの少女まんが道」
薔薇やレース、アンティーク調の小物や可愛らしい食べ物を散りばめた華やかな絵柄。
そこにマヌケなキャラクターたちが元気いっぱいに騒ぎまくるドタバタ・コメディを融合させて独自の世界を切り拓いた松苗あけみ先生。
6月10日に松苗先生の一代記をエッセイ漫画にした新刊が発売されました。
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「松苗あけみの少女まんが道」概要
たくさんの少女漫画を読んで育ち、少女漫画家を夢見つつもストーリーが作れずにグダグダしてしまった青春時代。
だけど絵を描き続けてきたことで、姉の友人である美大生や漫研の仲間たちと縁が出来、それが有名漫画家たちとの縁にまで広がっていってアシスタント経験を積みデビューに繋がる…
そんな運の良さを描いていっているのですが、いろいろ失敗もして七転八倒する姿をコミカルに伝えている明るいエッセイ漫画です。
綺羅星のごとく大御所漫画家たちの登場
ストーリーが作れず長い期間懊悩していた松苗先生ですが、美大に通う姉の友人の紹介で内田善美先生と知り合います。
緻密な画でファンも多く、未だ神聖視されている伝説の漫画家です。
知り合ったのは内田先生が美大生のときで、当時から芸術家肌で緻密で美しい絵を描いている天才でありながら、周囲に気を遣える普通の女性としての人となりも伺い知れます。
卒業制作のために一条ゆかり先生のアシスタントを辞めざるをえないときに松苗先生を後任として一条先生に紹介してくれたのが内田先生でした。
少女漫画界の大御所・一条ゆかり先生との交流は、一条先生の気さくな人柄が前面に出ていて明るく楽しく描写されています。
売れっ子だった一条先生が、ハードワークのために身体もメンタルもボロボロになっている様子も描かれていましたが暗さはありません。
一条先生の人柄と松苗先生の作風がマッチしていて、読んでるこちらは「うへ~、大変」と思いつつも、気持ちが重くなることはないので読み味はスッキリしています。
他にも名前がイニシャルで臥せられているベテランや、ワンカットのみ出てくるような大物が大勢登場しています。
一条先生や内田先生ほどではないけれど、2016年に亡くなられた吉野朔美先生との交流も描かれていて感慨深いものがありました。
「いたいけな瞳」が毎回楽しみだったなぁ(遠い目)
共感できる “焦り”
私が松苗先生を知ったときは、すでに代表作「純情クレイジーフルーツ」も終盤に差し掛かり、人気漫画家の地位を確立していました。
絵もキレイ、話も面白い、講談社漫画賞も獲り、本人も美人…
一条先生の「猫でもできる海外旅行」というエッセイ漫画(今読んでもめちゃくちゃ面白い)では、結婚して綺麗な一軒家に住み、一条先生ご夫妻と毎年一緒に旅行に出かけている、という完璧リア充。
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若い時から人生イージーモードな方なんだろうなと思っていました。
しかし意外や意外。
松苗先生、今でいう喪女でありオタクであり、高校卒業後はニートだったという非リア充ぶり。
絵を描くのは好きだけれど、ストーリーが作れず投稿作ひとつ描けずに長く苦悩するんですよね。
いまだ「何者」にもなれていない自分に焦りを感じていたこと、怠け癖に抗えずに落ち込んだりもして…
華やかな人生を歩んでいると思っていた方が、こんなに共感できるような身近な存在に感じるとは思っていませんでした。
まとめ
自虐ネタを大らかに笑い飛ばしている作品でもあります。
なんとなく、人生に躓いていても燻っていても、ダメな自分に落ち込んでいても「いつかは何とかなるから大丈夫」という気にさせてくれるパワーのあるエッセイ漫画でした。
できればもっと若い時に読みたかったな、と思います。
担当さんが言った “モンテ・クリスト伯” の金言「待て。しかして希望せよ」は落ち込んだときに支えにするつもりです。
こちらもよろしくお願いします
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