映画「西部戦線異状なし」(1930年) あらすじと感想【ネタバレあり】現実を知った少年兵たち
第一次世界大戦中のドイツ側少年兵たちの悲劇を映し出す反戦映画です。
ドイツが舞台ですが、製作はアメリカなのでセリフは英語になっています。
1930年に公開され、アカデミー作品賞及び監督賞を獲得。
力強い反戦メッセージを訴え、多くの人が名作として認め感動したにも関わらず9年後に第二次世界大戦が勃発しました。
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あらすじ
のどかなドイツの地方都市。
戦場に向かう兵士たちを送り出すパレードが町を練り歩き、町中で顔なじみの郵便配達員も徴兵のため最後の配達をこなす。
男子校では老教師が生徒たちに、祖国のために従軍して戦果を挙げることの重要性を説いていた。
その熱弁に血気盛んな10代の少年たちは高揚し、全員すぐさま軍に入隊した。
老教師の熱弁に揺り動かされたが、まだ躊躇いのあったポールも友人たちから口々に「一緒に行こうぜ」と肩を叩かれて、戦禍に入り込んでいった。
彼らはフランス軍とにらみ合う西部戦線へと汽車で向かう。
駅で落ち合った友人たちと興奮しながら談笑していると、近くで爆弾が落ちて友人の一人ベームが臆病風に吹かれ始めた。
新兵たちの訓練宿舎に着くと、郵便配達員のヒンメルストスが上官として現れた。
顔なじみのためポールたちは気安く話すが、ヒンメルストスの態度はすでに厳しい鬼軍曹になっている。
訓練では容赦なく泥の中で匍匐前進させ、隊列の乱れを叱りつける。
面白くない隊員たちは、初の任務・鉄条網作りの現場に行く前夜、ヒンメルストスにお礼参りをして高笑いするのだった。
翌日、現場にある塹壕内で古参兵たちに大きな顔をされてポールたちは隅に追いやられる。
食事も前日からとっていないので、それについて古参兵に聞くと戦場では食糧不足は当たり前なのだと教えられた。
そこへ食料調達が得意なカッツという古参兵が豚肉を持ってきてくれてポールたちは空腹を満たす。
カッツは古参兵の中でも特に頼れる人間だった。
鉄条網の設置はカッツの指導の下で行われた。
順調に作り上げていくのも束の間、フランス軍の砲撃が始まった。
何度も繰り出される砲撃にベームが命を落とした。
そして塹壕に戻った夜も、鳴りやまない爆破音にパニックを起こしたケンメリッヒが、引き留めるポールたちの声も聞かず塹壕を飛び出して走り回る。
そして足を負傷して担架で運ばれていった。
見舞いに行くとケンメリッヒは、とうに無くなった右足の幻肢痛を訴える。
友人のひとりは彼のブーツをベッド下で見つけ、無神経に「俺にくれよ」と言って持って行ってしまう。
結局友人はブーツが使いこまれないうちに銃撃によって死亡。
ケンメリッヒも傷口からの感染症で亡くなった。
間もなくポールは墓地での激しい戦闘で、砲撃によって出来た穴に身を隠す羽目になる。
自分の真上を敵の兵士たちが飛び越えて行く。
見つかるのではないかと緊張していると、ひとりの敵兵がポールに気づいて穴に入ってきた。
死の恐怖に駆られたポールは、敵兵の胸にナイフを突き立てる。
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感想
1930年の作品ですが、この当時でこのカメラワークは一体どうやったの!?と撮影方法が気になりました。
もうドローン撮影をやっていたのか?と疑ったくらい。
そのくらい今の技術と遜色ない映像です。
この映像技術のおかげもあって、体験したことのない「戦場のリアル」を感じられました。
老教師の熱弁に感化されて「よっしゃー!俺らも戦うぞー!」とその気になって意気揚々と戦地に赴いたけど、毎日泥まみれになって空腹を抱え、友人たちが一人また一人と死んでいく現実に打ちのめされていくポールの感情が伝わります。
戦争で戦うことは、どこか絵空事。
英雄になることは、カッコいいこと。
そんな軽い気持ちだったのが、現実の過酷さと対峙して精神的に極限まで追い詰められました。
敵兵の胸にナイフを突き立てたポールは、自分のしたことに怖くなります。
なかなか死なない敵兵を助けようと考えて水を飲ませたりしますが、彼は結局死んでしまい、懐から彼の妻と娘の写真を見つけて崩れ落ちました。
人殺しをした罪悪感。
なんとなくですが、爆弾や手りゅう弾を落とすのって「人を殺している」という感覚が薄くなるけど、目の前で1人を手に掛けると殺人をしている自覚が増す気がします。
マクロよりミクロのほうがより詳細に見えるためでしょうかね。
休暇で故郷に戻ったときのポールはもう子供っぽさが抜けて、軍服の似合う“男の顔”になっていました。
でも彼自身はそれを誇りには思っていません。
好き勝手に戦争論をぶち上げる現場を知らない老獪たちにウンザリするし、また生徒たちを戦場に送ろうとしている教師に軽蔑の眼差しを向けます。
戦争を通じて人間的に成長したポールでしたが、一時の油断・一発の銃弾でアッサリと最期を迎えます。
ポールの命が軽く奪われたことで人命の重さを観客に考えさせるラストは見事でした。
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