【洋書】バーネット「秘密の花園」あらすじと感想・ちょこっと英語メモ
「小公子」「小公女」の作者フランシス・ホジソン・バーネットが書いた児童文学です。
出版されたのは1911年。
あとがきを抜かすと276ページほどのボリュームです。
でも挿絵がなく、字もそれほど大きくないので、読み切るのに時間がかかりました (;^ω^)
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あらすじ
英国領インドでワガママ三昧の暴君に育った9歳の少女メアリ・レノックス。
両親がコレラで死んだことで、イギリス・ヨークシャーに住む叔父アーチボルト・クレイヴンの館ミッスルスウェイトに住むことになる。
荒涼としたムーアにポツンと建つ広大な屋敷は、100以上もの部屋に鍵がかけられていて寒々しい陰気な場所だ。
厳しいメドロック夫人や、おしゃべりな女中マーサ、無粋な庭師ウェザースタッフなど、周囲の人たちのこともすぐ嫌いになった。
しかしマーサとは、ユニークな彼女の弟ディコンの話を聞くうちに仲良くなる。
一日里帰りをしたマーサが、彼女の母からメアリへのプレゼントとして “なわとび” をもらうと、メアリは喜んで広大な庭で遊び始めた。
なわとびを飛びながら庭を駆けまわり、ウェザースタッフとも打ち解ける。
そして彼と親しいコマドリの誘導で、蔦に覆われた壁にある扉を見つけた。
10年前に亡くなったクレイヴン夫人が大事にしていた庭だった。
哀しみに沈むクレイヴン氏が鍵をかけて封印してしまった場所である。
メアリは土中に埋められた鍵を見つけ、禁断の庭に足を踏み入れた。
荒れ果てた庭に絶句するが、まだ枯れ切っていない薔薇を見つけ、メアリは庭を生き返らせると決める。
マーサを通してディコンにガーデニングの道具を用意してもらった縁で、メアリは彼にだけ秘密の庭のことを教え、一緒に庭造りを進めていく。
瘦せっぽちで顔色も悪かったメアリは、庭造りのおかげで新鮮な空気を吸い、食欲も増したことで健康的になっていく。
長雨が続くある夜、立ち入りを禁じられている廊下から人の泣き声が聞こえてきた。
声が聞こえる部屋に入ると、メアリと同い年の少年コリンが泣いていた。
背中が痛くて立ち上がることすらできない病弱な彼は、クレイヴン氏の息子だった。
メアリは彼と仲良くなる。
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感想
最初は「オズの魔法使い」と同様に、各章ごとにあらすじと英語メモを書こうかと思いました。
がっ!
調べた単語の数が多くなりすぎて無理でした (´Д`)
これまで読んだものより難しかったです。
まず冒頭、インドが舞台のためにちょっと特殊な単語が多かったんですよ。
・Ayah 「インドかマレー出身のメイド・乳母」
・Mem Sahib 「インド人が植民地時代に西洋人女性を呼んだ敬称」
「奥さま」とか「夫人」とかですね。
・compound 「インドなどの白人屋敷」
といった感じで。
そしてヨークシャーに来てみれば、マーサやディコン、ウェザースタッフが話すヨークシャー訛りがキッツー!!
an’ (and)、i’ (with)、o’ (of) など、省略語のダッシュがすごく多い (;´∀`)
そして多分 tha’ が you だと思います。
文法も特殊で、weを使わず全部 us。
主語にするときもUs’ll… なんて言い方してて、読みながら「文法がメチャクチャでも通じるもんだな」とか思いました。
thee は最後まで分かりませんでしたw
頻繁に出てきていたけど、it なのか there なのか that なのか…
そして何故か皆「Eh!」と言うことが多い。
イギリス人からすれば標準語と大阪弁くらいの違いで意味は通じるのかもしれないけど、私には津軽弁くらいチンプンカンプンな方言です (ノД`)・゜・。
これらでかなり苦戦しましたが、地の文は丁寧に書かれていて情景がありありと目に浮かびます。
癇癪を起した時のメアリやコリンの荒々しさ。
立ち入り禁止の場所に入ったときに泣き声が聞こえてきてビクビクする様子。
何よりも、花咲く春の爽やかな空気が文章から出ています。
長雨の後、弾む足取りで秘密の花園に向かうメアリが感じる空気や匂い、太陽の温かさなど、自分も体験しているようでウキウキしました。
現実でももうすぐ春がやってくるので、つい窓から青空を仰ぎ見てしまいました。
寒いから開けなかったけど。
この描写の的確さで、メアリとコリンが健康を取り戻し、心も穏やかになる成長物語にリアリティを持たせています。
周囲に暴力をふるったり暴言を吐いたり癇癪を起して騒いだり、大人でも手の付けられない子供でも、付き合い方次第で明るい笑顔の、のびのびとした子に変わり大人へと成長する、と教えている作品です。
自然の力、動植物を慈しむ心。
それが心身の健康につながる、というストーリー運びに、いま心の病で苦しんでいる人が癒される手法にもなるかもしれないな、と思いました。
もちろん人によりますが。
それにしても、途中から主役がコリンに入れ替わり、メアリが目立たなくなったのがちょっと…
秘密の花園見つけたのメアリなんだけど、コリンが花園に来てから傍観者になっちゃってる、と気になりました (;^ω^)
最後もクレイヴン氏とコリンの和解だったり、メドロック夫人とウェザースタッフの会話だったりで
メアリどこ行ったー!? いるかー!? (口数少ないけどいます)
すっかり影が薄くなるメアリですが、まあ彼女のほうがコリンより先に心の成長を遂げたので、物語上ではお役御免になったのかもしれません。
ディコンと一緒に動物たちとイチャイチャしていたんでしょう。
先に英語ムズかった話をしましたが、児童文学のためか、同じ言葉が繰り返し何度も出てきます。
その中でも特に多かったのは queer。
LGBTQのQに当たる単語なので、ここ近年では「クイア」と目にした方も多いかもしれませんね。
「風変わりな、奇妙な」という意味で、この小説では性的マイノリティを指す言葉としては使われていません。
…100年以上昔なので当たり前ですね ( ̄▽ ̄)
それから impudent「ずうずうしい」、cross 「不機嫌で」、fret / fretful 「気難しい」なんかも。
メアリやコリンが、周囲から受け入れられない子供たちであることがことさらに強調されています。
そんな子供たちでも変われる、生き生きと人生を歩める、というエールを真っ直ぐに送る作者の優しさが感じられる作品でした。
英語の難しさに四苦八苦しましたが、面白かったです。
春が待ち遠しくなりました♪
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